執行役員といっても実質的には部長クラスの社員であり、商法上の取締役とは異なる。また、現実には役員の重責を担う役員候補が常に輩出されるわけではない。優秀な役員候補が出揃う“当たり年”もあれば不作の年もある。あるいは経営のスピード化や新しい事業に対応できる若手役員を起用したくても、対象者が50代半ばしかいない事態も発生する。

そこで数年先の経営幹部候補を選抜し、育成する仕組みとして広まっているのが「後継者育成計画」(サクセッション・プランニング)だ。GEをはじめとする米国企業では早くから導入されているが、日本のグローバル企業でも徐々に導入が進んでいる。

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5年前と比較した、「役員昇進スピードの個人差」の変化/次世代経営幹部候補の選抜基準・方法

ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、部長・事業部長などのポストごとに後継者候補をリスト化する。さらに各候補者を「レディナウ」(今すぐOK)、「レディレイター」(もう少し時間を要する)、「レディフューチャー」(将来的に可能)の3段階でランク付けする。候補者個々の育成はボードメンバーで議論し、しかもリストやランク付けは毎年見直される。

日本企業でも日産自動車はグローバルの主要ポストについて、緊急的に代わりが務まる人、候補者にふさわしい人、将来的に候補者として期待する人の3つのカテゴリーで選出・育成している。また、アステラス製薬も課長、部長、執行役員ごとに後継者育成計画を作成し、毎年1回経営トップを含む「人事会議」でリストの検証を行っている。執行役員については社内の評価だけではなく、世界的に有名なエグゼクティブサーチ会社のアセスメントを受けさせるなど外部の視点も取り入れている。

では役員に抜擢するのに求められる要件とは何か。大手IT系企業の人事部長は「リスクを冒しつつ、結果を出し続けている人、もっと言えば、小さな失敗はしてもいいが、致命的な失敗を繰り返さないで結果を出し続けていることが役員・社長候補の大前提」と指摘する。