仕事の能力か、上司との関係性か……すべてにおいて変化の著しい現代のビジネスシーンで出世するためには、どんな能力が必要なのか? 各年代ごとに求められる、出世のための条件を考える。
20代で出てくる有望株と見込みなし
将来有望な若手人材の見極めは、すでに20代半ばで始まっている。新卒入社後、多くの企業ではジョブローテーションと呼ぶいろんな部署を経験させる計画的配置と育成を通じて優秀な人材の発掘を行っている。
たとえばNTTドコモは入社後に数カ月のドコモショップでの研修をはじめ各支店で顧客対応などの現場を経験。その後本社に戻し、さまざまな部署での業務を3年間経験した後、再び支店業務やグループ会社への出向などによる3年間の実務を経験させている。
あるいは大手総合商社のように、選抜した若手社員を対象に研修を兼ねて半年間の海外勤務を経験させるところもある。また、商社に限らず近年はメーカーもグローバル拠点づくりに乗り出しており、グローバルに活躍できる人材の発掘を重視している。医療機器メーカーのテルモは、2008年からBRICsなどの海外駐在員候補生を公募し、合格者は本社の経営企画室などの担当部門でビジネスや輸出入業務を学習した後に派遣される仕組みにしている。
グローバル人材の選別をすでに採用段階で実施している企業もある。大手化学メーカーの採用担当者は「会社の方針として海外で活躍できる人材も選考要件の一つとなっている。当然、新興国に行くこともあり、環境変化が著しい海外でのビジネスに対するストレス耐性や柔軟性などグローバルにやっていける素養を持っている人を学生の中から見極めるようにしている」と指摘する。
ただし、海外要員など会社が期待する若手人材の選別があからさまに行われるわけではない。人事コンサルティング会社パーソネル・ブレインの二宮孝代表取締役は「潜在能力のある若い社員に目をつけて、長い時間をかけて育成したいという思いは今まで以上に強くなっている。ただし、若いうちからレッテルをあまり貼ることを避けている企業は多い。まだ出来上がっていない人材であり、本人はもちろん上司も含めて人事として目をつけていることがわからないように慎重に発掘を進めている企業が多い」と指摘する。