チャレンジ精神、決断力、リーダーシップは経営幹部にも必要とされる能力だ。前出の大手流通業の人事担当者も「入社後5年間での昇格が早い人の分析をしたところ、共通するのは指導力の高さと共感性の高い人だった。わかりやすく言えば、行き詰まっても自ら率先して動ける押しの強い人である」と指摘する。

多少荒削りな部分はあってもそうした能力を身につけていることが将来有望かどうかの目安となる。ある商社の中には、同程度の能力を有すると思われる社員を同じ部署に配属し、互いに競わせることで資質を見極めようとしているところもある。

大手企業の多くは配置や育成により資質を見極めようとするのに対し、ビジネスモデルの変化が著しいIT産業や中堅企業では年齢や経験は関係なしに早い段階で重要な仕事を任せることで、優秀な人材を見極めようとしている。二宮氏は「従来の経験が通用しないIT系企業など、若い人の感性に期待し、新しい価値を生み出す産業においては、極端に言えば入社後2~3年程度の社員に権限と責任を与えて重要な仕事を任せ、実際の仕事の成果を見て大胆な抜擢人事を行っている」と指摘する。

また、中堅・中小企業では優秀な人材ほど、その情報が経営者の耳に達し、若くして社長の右腕として活躍するチャンスもめぐってくる。

「中堅・中小の場合、従業員数も少なく、上層部との距離が近いこともあり、20代後半から30代前半になると、優秀な人材はしきりに社内でも名前が登場するようになる。実際に社長の右腕としてかなりのことまで任されることも珍しくない。肩書は主任クラスでも社長や役員のお気に入りということで社内でも一目置かれるような存在になる」(二宮氏)

それは必ずしも中堅・中小企業に限らない。大手ゼネコンの人事部長は20代であっても将来の経営幹部候補と目される社員が数年に1人は現れると言う。

「採用時は目立たなかったが、その後大化けし、入社後5~6年ぐらいたつと、決断力、行動力、リーダーシップ力ともに他の同期を圧倒し『あいつはすごい』という声が職場を超えて人事の耳にも入ることがある。毎年ではないが、5年に1人ぐらいの確率だ。人事としても将来の幹部候補として大事に育てるようにしている」(人事部長)