こうした優秀な人材の発掘と育成を人事の世界では“旗を立てる”という言い方をする。人事考課や研修を通じて将来有望な若手をピックアップし、計画的に異動を行い、育成していくやり方である。
大手流通会社では採用した数百人の大卒の1割を毎年幹部候補生として登録し、特別な配置と異動による早期の店長候補を育成している。
「若くして大型店の店長を任せるには、成長するのをじっくりと待っていては遅い。採用時に二重丸をつけた1割を選抜し、コア人材として教育する。通常なら入社後の3年は店舗勤務だが、意図的に1年で本社に戻し、本社業務を1年経験させた後、1~2年ごとに規模の違う店舗や新しい店舗への配置換えを繰り返すことで育成する」(同社人事担当者)
ただし、本社に勤務してもパフォーマンスが出せなければ半年程度で別の店舗に戻すなど、1割の選抜組を常に入れ替えている。
ではどういう人材が将来有望な社員と見なされるのか。もちろん与えられた職務を忠実にこなし、業務成績も良好な社員であるが、二宮氏はそればかりではないと指摘する。
「企業が求めているのは今までの常識にとらわれないチャレンジ精神の持ち主であり、加えて若手であっても決断力がある人だ。また管理職ではないにしても、少人数のチームの中でもリーダーシップを発揮するなど、成長への期待を抱かせる潜在能力を持った人材を会社は求めている」