「出世するタイプは、主任クラスであれば、問題解決に当たって、すぐ上の係長ではなく、その上の課長ならどのように解決するだろうかと、1つ上の上司の視点で考える。係長であれば部長、課長なら1つ上の本部長はどう考えるのかと、大局的視点で考えるくせを身につけている人が多い」
人とのつきあい方も重要だ。二宮氏は「周囲に敵をつくらないというか、くせのない人のほうが選ばれる傾向がある」と指摘する。くせがあっても、ある分野に秀でていることを評価し、引き上げてくれる経営陣がいればいいが、そうでなければ役員になるのは難しいという。今、流行の坂本龍馬のような大胆でくせのある人物よりも、ソツのないタイプのほうが現実には社長になれるのかもしれない。
ただし、ファッション業界やコンテンツ業界など創造性やクリエーティビティが求められている企業では「多少くせがあっても一歩先の時代を予見し、新しい価値を生み出せるタイプが役員になる場合もある。堅実型もいれば斬新性を持った人物もいるなど、役員のバランスを意識して選ぶケースもある」(二宮氏)という。
大手IT系企業の人事部長は経営トップになる人というのは「かわいげがある人」という。
「上に対しておべっかを言う人ではなく、上からも下からもかわいがられる人、愛嬌がある人だ。そういう人は上だけではなく、下からも魅力的な存在であり、なんとかその人を支えたい、支えなきゃいけないと思わせてしまうところがある。もちろん、実績は申し分なく、度胸はあるが、それだけではなく、愛嬌も兼ね備えた人はトップとして魅力がある」
人心を取り込む人間的魅力は経営者には不可欠の要件ということだろう。
※すべて雑誌掲載当時
(小原孝博=撮影 image navi=写真)