イギリスの学資ローンは「残高帳消し」あり

教育費が高額といえば、イギリスの大学(学士課程は通常3年間)も学費が高いことは知られている。政府の学資ローンを借りる人が多く、卒業時の負債額の高さは話題になっている。イギリス政府資料によると、2021年秋入学者の場合、卒業時の負債額は4万5800ポンド(約750万円)。政府は、それらのうち、フルタイムの学部修了者では約20%が全額返済(負債額には利息とインフレ率が加算される)すると予想している。

では、残りの多くの人たちは返済していないのだろうか。その逆だ。返済は卒業後の収入が一定額(プラン2と呼ばれるイングランド地方の設定では、月収2274ポンド=約37万円、年収にして2万7295ポンド=約447万円)を超えると始まり、返済期間は最長30年と決められている。完済しなくても30年という節目までは返金し続け、それ以降の残高は帳消し(政府負担)になる。

返済開始後、失業したり給料が減ると、それに応じて返済額も下がる。収入が一定額に達しなければ、返済は始まらない。

ある調査結果(各種の割引番号を提供するマイバウチャーコーズが実施)の表を見ると、14年ほどでローンを100%返済できる人、返済期間ぎりぎりの30年付近で完済している人、40~50%ほどしか返済できない人がいて、職種(収入)による返済の差がよくわかる。財務管理職のように早く完済できれば最終的に払う金額は元金に近いが、機械技師のように返済が長期に渡ると元金の1.5倍払うことになる。

返済金は給料から天引き

毎年いくら払い続けるのかを具体的に見てみると、先の一定額を少し上回る年収2万8000ポンド(約458万円)だと年間返済額は63.45ポンド(約1万400円)、年収3万5000ポンド(約570万円)だと年に693.45ポンド(約11万円)の返済といった具合だ。返済金は給料から天引きされる。自営業者の場合は申告制で、返済が滞ると債権回収会社が来て裁判になる可能性はある(イギリス最大の消費者支援サイトMoney Saving Expert)。

なお、この学資ローンは最近改正された。2023年秋入学者からプラン5が適用され、返済が始まる一定額が引き下げられた一方で返済期間が最長40年と長くなり、返済の負担は増すことになる。これにより、政府は、全額返済率が改善し、約55%になると見込んでいる。