シニアこそ挑戦して、失敗せよ

私はいま、72歳になります。人によっては、60歳を過ぎたからとか70歳を過ぎたからと言って、仕事を辞めていきます。趣味に生きたい、という人もいます。でも趣味は趣味ですから。仕事でしか得られない充実感というものがあると思うのです。

若いころと違って僕らくらいの年になりますと、生きていくという観点ではそんなにお金がかからない生活になっていきます。だからこそ仕事において、「まあ、当面7割でいいんだ」とでもいうんでしょうか、そんな感じでゆっくり挑戦していけます。すると逆に成功しやすくなるんです。

よく「若い人に譲る」という言い方をしますが、それはちょっと「かっこいい言い訳」に過ぎないような気がするのです。本当のところは、失敗する姿を見せるのがかっこ悪いから、表に出ないよ、ということではないでしょうか。

そんな“敵前逃亡”をしてはダメですよ。シニアこそ挑戦して、ある意味失敗する姿を若い人たちに見せることが大切だと思います。

フォード・マスタングを駆って夢を追う日々

この年になると、若いころのように美味しいものをたくさん食べたいという欲求もなくなって、普段の食事はカレーとハンバーグがあれば十分。炊飯器でご飯を炊き、スーパーで安い食材を買ってきて調理しています。

そんな日常ですが、でもひとつだけ贅沢をしました。アメリカ生産に挑戦する自分に“ニンジン”を与えたいと思って、フォード・マスタングを買ったのです。

桜井博志さんは、今日もマスタングを駆ってNY蔵に通う
写真提供=旭酒造
桜井博志さんは、今日もマスタングを駆ってNY蔵に通う

半世紀以上前、ニキビ面だった中学時代の私は、ゴージャスなアメ車に憧れていたものです。その夢がやっと叶いました。エンジンをかけると、ヴォンヴォンとすさまじい音がしますし、パワーはなんと475馬力。

この車を駆ると、蔵に行くのが楽しみに思えるのです。今日もまた新しい挑戦だ! そんなふうに自分の中にエネルギーが充塡じゅうてんされるのを実感します。

(構成=菊地武顕)
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