若者の「友達づきあい」が変化しつつある。Z世代のトレンドに詳しい芝浦工業大学の原田曜平教授は「SNSによって交流範囲が広がった反動で、『深く狭い友人づくり』を求めるようになっている。このため飲み会シーンにも変化が起きている」という――。(第2回/全2回)
蛇口からお酒を注ぐ女性
写真提供=GOSSO

「濃密な時間」を過ごすZ世代のアイデア

「Z世代」と呼ばれる10代から20代前半までの若者の間で、友達との向き合い方に変化が起きています。ひとことでいえば「広く浅い人間関係」から「深く狭い友人づくり」という変化です。

前回は、Z世代がSNSを駆使して「友情の再構築」を試みている様子・トレンドを紹介しました。今回はリアルに焦点を当てます。具体的にどんなことをしているのか。以下の6個のキーワードにまとめたので、順を追って説明しましょう。

①コスメクリエケーション……好きな色のコスメを作ることで友達との思い出を残す
②呼び出しおしゃれ……会わないと気付けないお洒落をして会うきっかけを作る
③お酒れブランド……デザイン性の高い服でさりげなく「お酒好き」をアピール
④スマホ利用飲みゲー……誰もが持っているスマホで大声を出さずに飲み会を盛り上げる
⑤同調飲酒……お酒の強さに関係なく、気を遣わずにみんなで飲み会を楽しむ
⑥背徳友情……夜にハイカロリーなパフェを食べる背徳感を友達と共有する

学校帰りに非日常を気軽に楽しむ

①「コスメクリエケーション」とは、身近なコスメを自分たちで作りながら(クリエイティブ)友達と親睦を深める(コミュニケーション)のことです。

自分に合った、好きな色のアイシャドウや口紅、香水といったコスメを一緒に「創る」ことで友達との思い出を残したい――。そんなニーズから生まれたトレンドです。SNSでもコスメ作りの様子が頻繁に投稿されるようになりました。

TikTok「LIP ATELIER」
TikTokでは、コスメをつくる様子が頻繁に投稿されている。

これは、仲のいい友人と旅行に行って旅の思い出にろくろを回して食器を作るような、かつて私たちの世代がしていた行動と性質は同じです。しかし、コロナ禍のせいで深く狭い友情はおろか、広く浅い交友すら失ってしまったZ世代は、できるだけ多くの友達とできるだけ多くの思い出を残さなければなりません。

大人数での旅行はみんなの予定も合わせづらいし、かといって2人で旅行に出かけるほどまだ深い間柄ではない。そもそも旅行はお金も時間もかかるから、1カ月に何人もと遠くへ遊びに行くのは無理がある。

そこで考えだされたのが、学校帰りにも気軽にできる「コスメクリエケーション」という方法でした。日常において非日常を創出することで、コスパ・タムパ(タイムパフォーマンス)よく友達と付き合い、友情を築き直そうとしていると考えられます。