僕の感覚だと、「背徳=違法、友情=酒」。昔はこの2つでしか男同士の友情は成立しないような時代でした。体育館の裏で隠れて喫煙するような不良たちの問題行動が「背徳友情」だったわけです。しかし、健康意識の高いZ世代にとっては、太りやすい夜にハイカロリーな「ギルティーフード」を食べる、ただそれだけのことが背徳になってしまうんですね。
僕は彼らを見て、「全然悪いことしてないじゃん」とほほ笑ましく思ってしまいます。ただ、彼らにとっては、夜という非日常な時間と背徳感という特別な感情を友達と共有することで友情を育もうとする、切実な思いがあるのかもしれません。
フォロワーが多くても「本当の友達」は少ない
「広く浅い人間関係」――これが、SNSが浸透したZ世代の友達付き合いの特徴です。40代の僕から見れば「知り合い」に過ぎないような人を、10代から20代前半までの若者たちが「友達」と見なしていることはよくあります。
直接会ったり話したりしたことはあまりなくても、SNSのおかげで、毎日何をしているか、趣味は何か、誰と付き合っているかといったプライベートが把握でき、継続した関係性が発生しているからです。
共通の趣味をきっかけとしたSNS上のつながりがリアルの親交に発展することもありますが、相手のことを「親友」と呼びながら、住んでいる場所や家族の職業など相手の基本的な個人情報すら知らない場合もあります。
通っている高校が一緒で個人情報だけ知っている状態から次第に趣味を知っていく……という昔の友情の深め方とは真逆ですよね。よくそれで心を許しているなと、僕は驚いてしまいます。
コミュニティによって“キャラ”を変える人もいます。例えば、大学のゼミでは飲みキャラだからがさつな格好をしているけれど、SNSで知り合った推し活の友人たちと会うときは小ぎれいな服装をして出かけるというものです。
所属するグループに合わせて見た目や性格をカメレオンのように変えるのです。自分の限られた一面だけしか表に出せないような人付き合いは、大変です。
「空白の3年間」で失ったリアルな友人関係
どんなにSNSが発達しているとはいえ、リアルで会うことが人間関係の構築に大切な役割を果たすのは、Z世代にとっても同じです。その友情を築く機会を、コロナ禍はZ世代から3年間も奪ってしまいました。僕の学生も、授業はオンラインになり、人と気軽に会えなくなったせいで、大学に入ってからほとんど友達の顔を直接見ていないという子ばかりです。