再び人と自由に会えるようになった今も、昔のようにただカフェでおしゃべりしたり、映画を見に行ったり、居酒屋で飲んだりするだけでは、コロナ禍で失った時間を取り戻すことはできないのでしょう。

Z世代が放課後にわざわざ友達とリップを作ったり、これまで飾らなかった爪の裏や歯まで飾るようになったり、あえて夜にパフェを食べに行ったりするのは、一回一回のリアルな経験を濃密にしようとしているからだと思います。“過剰なリアル”を追求することで、Z世代は友情を築き直そうとしているのです。

かつての日常が戻りつつある今、若者たちは、失われた3年間の空白を必死に取り戻そうとしています。それがトレンドとして表れているのではないでしょうか。

ビーチではしゃぐ仲間たち
写真=iStock.com/molchanovdmitry
※写真はイメージです

「本当の友情」は当たり前のものではなくなった

僕は学生を見ていて、思春期にコロナ禍が起きてしまったことは本当に可哀かわいそうだったと思わざるを得ません。大学に入っても、彼氏・彼女はおろか、友達すらできない子も少なくありません。

「本当の友情」は本来、放っておいても得ることができるものでした。クラスメイトや同級生、部活やサークルの仲間など、狭いながらも深い人間関係ができたのです。しかし、Z世代にはそれが当たり前ではないのです。

SNSの利用やコロナ禍の「空白の3年間」がZ世代に及ぼす影響は、とてつもなく深刻なのではないかと危惧しています。

(構成=奥地維也)
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