対面で会うための口実を上手に作り出す
②「呼び出しおしゃれ」とは、会わないと気付けないお洒落をして会うきっかけを作ることです。細部にこだわったお洒落であり、ほとんど誰も見ない爪の裏にラメを塗ったりパールをつけたりする「裏ネイル」が典型例です。
例えば、歯につけるジュエリー「ティースジュエリー」は、Zoomだと歯に青のりがついているかと思うほど見えづらいのですが、アメリカ人歌手のケイティ・ペリーさんや、韓国の音楽グループBLACKPINKのLISAさんなどの有名セレブの影響で日本でも話題になりました。
瞳がハート型になる「ハート型カラコン」は「呼び出しおしゃれ」のアイテムです。僕も実際につけてみましたが、すごく近くからのぞき込まないとわかりません。
対面で人に会いづらい期間が続いた影響から、わざわざ友達と会うことが特別な意味を持つようになりました。互いの仲の良さを確認し、周囲への仲良しアピールにもつながります。「呼び出しおしゃれ」は相手を誘い出す口実として、Z世代の心理にマッチしました。
レストランで隣に座ることで始めて気付くようなお洒落をすることで、友達を誘い出し、「今日ハート型のカラコンしてるんだ」「え、見せて見せて」と相手との距離を縮めようとするきっかけとして活用していると考えられます。
なぜ「お酒好き」をアピールするのか
③「お酒れ(おしゃれ)ブランド」とは、近年続々と生まれている、お酒をテーマにしたファッションです。ビール柄の靴下や、「酒飲倶楽部」「NONBEE」と書かれたTシャツなどが、Z世代のお洒落アイテムとして広がりました。
デザイン性の高い服でさりげなく“お酒好き”をアピールしたい――。そんなZ世代の心理が反映されていると思います。なぜ、彼らはお酒好きをアピールしたがるのでしょうか。
自粛ムードが明けつつあるなか、交友関係を広げるため飲みに誘いたいし誘われたいものの、コロナ禍で酒離れしている人も多く、気軽に声をかけづらくなったとZ世代は感じています。また、コロナ禍が完全に終わったとは言えない状況下でお酒好きを直接的にアピールすると周りから引かれてしまうのではないか、という懸念も生まれました。
お酒をモチーフにした服を普段からさりげなく着て酒好きという自己ブランディングをしておけば、「あいつ、いつもお酒のTシャツ着てるから飲み会に呼ぼうぜ」というように、誘われる可能性が高くなるはずです。「お酒れブランド」を着ることは、受動的であるようで積極的な、“誘われ待ち”の戦略なのです。
「呼び出しおしゃれ」が誘う側の工夫だとすれば、「お酒れブランド」は誘われる側の工夫と言えるでしょう。