大学生の飲み会で異変が起きている

まだまだ大声を出すことがはばかられる今、大学生のなかで流行しているのが④「スマホ利用飲みゲー」です。

これは、それぞれ好きな人に同時に電話をかけて一番早く折り返しの電話があった人が勝ち、最後まで折り返しがなかった人は一気飲みをする「好きピに電話ワン切りゲーム」や、文字通り「通知来たら負けゲーム」「スマホ触ったら負けゲーム」など、誰もが持っているスマホを利用して飲み会を盛り上げる仕掛けです。

コロナ禍で大勢での飲み会が開催できず、自粛が続いて誘いにくい状況が続きました。その影響から、大声でコールをしたり、山手線ゲームで騒いだりすることはなくなりつつあります。その代わりとなるゲームが新しく生まれたわけです。大声で歌ったり、騒いだりせずとも、以前と同じように友情を深められるよう工夫しているのでしょう。

若者のお酒の席には、もうひとつ大きい変化が起きています。

ここ数年、座席に蛇口のついた居酒屋が異常なペースで増えているのにお気付きでしょうか。自分でお酒を注ぐ形式の、安価な、飲み放題の居酒屋です。東京・高田馬場などの大学生の多いエリアでは、座席でレモンサワーを自分で注ぐのが学生の飲み会のスタンダードになっているほどです。

座席に蛇口のある居酒屋
写真提供=GOSSO
人気の飲食店「ときわ亭」。テーブルの蛇口からお酒を注ぐスタイルをいち早く取り入れ、注目を集めている。
座席に蛇口のある居酒屋
写真提供=GOSSO
手軽な価格の飲み放題とあって若い世代のユーザーも多い。

「自分で注ぐ居酒屋」が増えているワケ

なぜ座席に蛇口のついた居酒屋が増えたのでしょうか。お酒の強さに関係なく気を遣わずにみんなで飲み会を楽しみたいというZ世代の心理が反映されていると思います。私たちはこれを⑤「同調飲酒」と呼んでいます。

Z世代はコロナ禍前から、参加者が割り勘で同じ金額を払うことに対して、飲める人は気まずさ、飲めない人は理不尽さを感じていました。加えて、上の世代ほど飲みの場に慣れていないため、他人と飲むペースを合わせなければいけない気疲れもありました。

コロナ禍で人間関係がさらに薄くなり、それほど親しくない人たちと集まる機会が増えたことで、この心理に拍車がかかったのでしょう。安い飲み放題で代金は全員同額であれば、割り勘の引け目や不公平感を抱かずに済みます。

自分のタイミングでみずからお酒を注ぐシステムであれば、それぞれが飲んでいる量が一見してわかりづらいので、「飲める人も飲めない人もみんな同じぐらい楽しく飲んでいる」という同調感を常に保てる。おかげで誰もが他人に気を遣わずマイペースに飲めるというわけです。