「外に外に」の精神で

近年入社してくる若い社員を見ていて思うのです。おかげさまで、優秀な若い人材が旭酒造に入ってくれるようになりました。その一方で、獺祭が生まれて30年ほど経つため、「獺祭は売れる酒だ」という認識を持つ人も多くなっています。

酒造りにゴールはありませんが、そういう意識になる社員が増えていけばしだいに大企業病におちいり、保守的になっていってしまいかねません。

旭酒造は地方から東京へ、海外へと、「外に外に」「壁の先に成功がある」という意識でここまできました。挑戦し続けることが大切だ、という意味でも、ニューヨークという新しいステージを機能させたいと思っています。

私はかつて、ビール事業に手を出して2億円もの借金をこさえてしまった経営者です。挑戦したうえでの失敗は決して責めるつもりはありません。挑戦に挑戦を続け、「DASSAI BLUE」が獺祭としのぎを削る日、あるいは獺祭を超える日がやってきたらと願っています。

酒造りにゴールはない

とはいえ、私にとって「DASSAI BLUE」がゴールではありません。

今、日本国内でさらにもう1つ新しい酒を造ろうとしておりまして、これは2026年くらいの完成を目指しています。そうした超高級品の獺祭の酒蔵を建てようとしています。

アメリカで造る「DASSAI BLUE」は90ドルから100ドルくらいの値段を考えていますが、次に日本で、それをはるかに上回る1本1000ドルくらいのお酒を造る。

「獺祭」という酒そのものも、まだ全然完成形だと思っていません。

さらにその先に何が待っているかはわかりませんが……寿命が尽きるまで前向きに進んでいきたいし、挑戦していきたいですよね。