失敗は早く安く賢くし、そこから学ぶ

――失敗をいまはどう生かしていますか。

【松山】「スーパードライ」のフルリニューアルでは、フルリニューアルを「やることありき」ではなく、部門を横断し全社一丸となることを優先させました。「リジョイ」の失敗の教訓も踏まえ、いまアサヒの社内で言っているのは「リスクをとらなくなるとビジネスがダメになる」ということ。「失敗は早く安く賢くし、そこから学ぶ」。素早く失敗して試行錯誤していき、手ごたえを感じたら取り組むことが大切だと考えています。

――P&G出身者がビジネス界で、数多く活躍していますね。

【松山】とてもうれしく思います。P&Gの強みの一つは、若手に権限を委譲すること。いまにして思うと、P&Gの職場は競争が激しく、切磋琢磨せっさたくまし合い、そもそも自由闊達かったつでした。こうした良い面はアサヒにも取り入れたい。

――P&Gに6年いて、コンタクトレンズのチバビジョン(現日本アルコン)に転職され、サトーHDに再入社して最後は社長を務めた。アサヒには、どういう経緯で入社したのですか。

社長を終えても、まだワクワクしたい

【松山】就活でした。サトーHD社長を6年やって18年3月、任期を迎えて退職しました。この時私は、まだまだ働ける58歳。以前から知己のあった米系ヘッドハンティング会社に「マーケティングの仕事はないか」と話を入れたところ、紹介されたのがアサヒでした。

松山一雄氏
撮影=門間新弥

小路明善アサヒグループHD社長(現会長)との面談は1週間に2回、それぞれ1時間やりましたね。矢継ぎ早に質問され、返していきましたが、気がつけば私はワクワクしていた。ワクワクに導かれるように8月に顧問で入社し、9月に専務に就く。年齢や前職から役職は決まりました。

――職務のプロが役員クラスで転職することを、経験者としてどう考えますか。米企業では一般的ですが。

【松山】その人が求めるものが、会社が求めるものと本質的に一致するか否かが重要なポイントだと思います。「社員が輝き続ける会社を目指す」ために適材適所で人員配置することが大前提です。