TikTokだけが脅威ではない
中国当局の関与が疑われるスマホアプリはTikTokだけではない。中国の内外で12億人を超えるユーザーを抱えるメッセージアプリWeChatも、香港問題や天安門事件に言及したり、中国のゼロコロナ政策に異を唱える投稿やアカウントがたちまち削除されることで有名だ。2022年9月には、米FBIが米ツイッター社に対し、従業員の中に中国国家安全部の工作員が少なくとも一人いると通知していたことが報じられた("米ツイッター社員に中国工作員が存在、FBIが通知=内部告発者", ロイター, 2022年9月14日)。
さらにファーウェイやZTEといった中国メーカー製のネットワーク機器や携帯電話基地局設備は、米政府などからたびたびバックドアの存在を指摘されている(U.S. Officials Say Huawei Can Covertly Access Telecom, The Wall Street Journal, Feb. 12, 2020)。
中国という国家は非常にしたたかである。中国人民解放軍の喬良と王湘穂が共著した『超限戦』(邦訳:角川新書)で描かれているように、彼らは今から20年以上も前に、戦争における手法について通常戦、外交戦、国家テロ戦、諜報戦、金融戦、ネットワーク戦、法律戦、心理戦、メディア戦など多数の手法を列挙していた。
時代により実現手段は変遷してきているものの、同書で書かれたテーマの多くは現に脅威として発現している。SNSを使った工作もその一翼を担うととらえるべきだろうし、3月7日の全人代で新設が決定した「国家データ局」についても、前述の国家情報法なども踏まえ、どのような運用が行われていくのかを注視すべきだろう。