目立たないが重要な「検索履歴」の収集
検索履歴はかなり重要な個人情報である。筆者はこれまで刑事事件における強行犯罪(殺人や放火、強制性交等事件)や公安事件捜査の際に携帯電話を解析した経験があるが、検索履歴にはその個人の悩みや関心が如実に反映され、極めて有効な捜査上の情報となった(被疑者のブラウザの検索履歴が、公判で証拠として認定された例もある)。
TikTokアプリ経由で収集された検索履歴を、個々のユーザー情報とひも付けされた形で中国当局が入手できれば、最近話題となっている中国海外警察(※2)と連携しての在外反体制派中国人の追跡や連れ戻し、他国の反中的な言論人の把握や監視のためには、極めて有効なツールとなるだろう。
※2:海外に住む反体制的中国人の監視や追跡、本国への強制帰国を行うために置かれているとされる非公式組織。スペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」が発表した報告書によれば世界50カ国以上、計102カ所に設置されており、日本においても東京、名古屋、福岡の3カ所に存在するとされる。
いつの間にか帰国した反共産党的な中国人留学生
筆者の民間での経験であるが、反中国共産党的な思想を持ち、そうした内容の書き込みをTikTokではない別のSNSで発信していた日本在住の中国人留学生がいた。ところが、あるとき彼に美しい中国人の彼女ができ、それから程なく彼は反中的な内容の発信をやめ、中国に帰国してしまった。2人の間に具体的に何があったかは結局不明だったが、後に彼女のほうには、中国共産党員との密接なコネクションが浮上した。
あなたが中国人でなくとも、中国当局があなたのスマホから有用な情報を入手できれば、意図せずに彼らのスパイ活動に貢献することにもなりかねない。極端な話、若い頃にTikTokに投稿した不適切な動画をネタに、後年出世してから政治工作や諜報活動への協力を強いられる可能性すらある。