「耳を傾ける」と「聞き流す」はどう違うのか

一般的に広く使われる「聞く」は、どちらかというと「音声を情報として受信する」ようなニュアンスです。ただ「聞こえている」になると、事情は少し変わってきます。「聞く」には、まだ積極的な情報収集行動も含まれるのですが、「聞こえている」はお店のBGMのように、自然と耳に音が入ってきているだけ。極端に言えば「鼓膜が振動して音として認識している」に近いニュアンスになります。

こうした姿勢については、英語でも表現が使い分けられています。「きく」を表す単語は主に「listen」と「hear」の2種類ですが、やはりニュアンスには違いがあります。「listen=意思を持って耳を傾ける=聴く」なのに対して、「hear=音や声が自然に耳に入ってくる」なんですね。

ですから、Bさんの言う「聞こえてるよ」では、Aさんの話を真剣に理解しようと耳を傾けていることにはなりません。Aさんの声が耳に入ってきているだけ。悪意的に取れば「聞き流している」というニュアンスになってしまうでしょう。

学生時代、授業で先生の話をボーッと聞いていて、突然指名されたときに答えられず「聞いていませんでした」――そんな経験はありませんか。それも「音声としては聞こえていたけれど、内容を理解していない」状態の一例です。

積極的な「聴く姿勢」がビジネスでは欠かせない

コミュニケーション、とくにビジネスにおける会話では、相手の話を理解しようと「真摯に積極的に耳を傾ける」という能動的な姿勢が重要なのは言うまでもありません。

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そのためには、聞こえているは論外として、「聞く」よりももっと積極的に意識を傾けるニュアンスを持つ「聴く」という姿勢を意識することが大切になります。まずは自分の話をするのではなく、相手の言っていることを「聞く」。そこからさらに相手の気持ちや伝えたいことを理解したり、質問したり、共感したり、議論するために、より意識を向けて身を入れて「聴く」。こうした積極的な姿勢が会話による相互理解を深めていくのです。

「人の話を聞いているようで、その実、何も聞いていない」という人がいます。これほど失礼なことはありません。相手の話を、どのような姿勢で「きく」のか。相手の言葉をただの音声情報として耳に入れるのか、その意味するところを理解しようと真剣に向き合うのか。すべては「きく」側の意識の問題です。相手の話には真剣に耳を傾ける。それは会話が上手い下手という以前の、人づき合いの基本マナーです。

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