成績が良い人ほど「叱り」から学ぶ

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理不尽なこと、些細なことで叱られているケースが多い

一方で、部下の育て方に悩む人に希望を与える調査結果もある。

「厳しく叱られた経験をあとから振り返って、意味がない・逆効果だと思った経験があるか」という質問に対する答えと、回答者の成績(同資格の社員に比べた自己評価)との相関関係を見てみると、興味深い結果が見えてくるのだ。

成績の悪い人においては、「意味がない・逆効果だと思った経験が『ある』」と答えた人が約7割を占めている。対照的に、成績の良い人では約6割が、「意味がない・逆効果だと思った経験が『ない』」と回答している。つまり成績の良い人の多くは、上司からの叱りを常に肯定的に捉え、貴重な経験として活かしていける傾向がある。

先日、某ディーラーのマネジャーに聞いた話だが、全社でもトップクラスの営業マンが突然、「会社を辞めたい」と伝えてきた。そのマネジャーは彼を慰留しようと面談をセッティングし、彼の不満に耳を傾けた。彼の口から飛び出したのは思いもよらない言葉だった。

「うちの会社は甘い。こんな甘い会社はないですよ。なぜもっと厳しくやらないんですか!」

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3割が「仕事のやり方・質」について叱られたとき、やる気がでたと回答/「目標達成できなかったこと」を叱責されたとき、無意味だと感じる人が3割

自分は成長したいし、営業成績ももっと伸ばしたいのに、この会社やいまの上司の下では、そういう実感が持てないのだという。結局、説得むなしく、その営業マンは会社を去っていった。

最近の若者は叱られることに慣れていない、とはよく言われることだが、このケースのように、叱るべきときにきちんと叱ることが社員に成長している実感を与え、仕事へのモチベーションになっていく場合もある。

先の調査結果も併せて考えると、どうやって叱るかということの前に「誰を叱るか」という相手の見極めが何よりも重要となる。一般的な傾向としては、成績の良い人ほど叱ることによって成長する可能性が高く、成績が悪い人は叱っても効果が薄い、といえるだろう。