叱る相手を見極めたうえで次に考える必要があるのは、どんな叱り方をすれば効果的で、どんな叱り方をすれば逆効果になってしまうのかということである。

「厳しく叱られた経験が役立っている」と答えた人にその理由を聞くと、「自分で気づいていないことを気づかせてくれた」「叱られることにより、自分の意識が変わった」などの答えが寄せられた。

一方、厳しく叱られた経験が「逆効果だった」という人はその理由を、「むしろ意欲が低下したから」「職場の雰囲気が悪くなったから」「具体的な助言がなかったから」などと答えている。

この結果から、部下は自分の誤りに無自覚なときに気づきを与えてくれる叱り方をされると肯定的に受け止め、「すでに誤りを自覚しているのに叱責される」「感情的に叱られる」ケースでネガティブに受け止めていることがわかる。

私はこれまでの経験から、「効果的な叱り」には、踏むべきステップが存在すると考えている。「1.正しく認識させる」→「2.納得させる」→「3.具体策を提示する」→「4.成功させる」の4つだ。

営業成績が上がっていない社員がいたとしよう。まず、「成績が上がっていないという事実」「上がってないことが問題であること」を本人がわかっていない場合、厳しく叱り飛ばしてもいい。逆に、本人が認識しているときは、ことさらそのことを指摘しても意味がない。

認識はできている、すなわち「頭ではわかっている」けれど、「どうしてもやらなければ」という自覚を持てていない場合。このケースが一番、「叱るべき」状況である。

強く自覚しているにもかかわらず、解決に向けての方法が見出せていない場合は、その原因と解決に向けての方策を提示してやる。そもそも「やれそうな気がしない」から自覚を持ちきれない、ということもある。

そして、最後にはなんとしても成果を上げさせてやる。そのために必要があれば「叱る」こともいとわない。