小池百合子知事はなぜ強いのか
これまで述べてきたように政党や政治家がつくり出す政策・制度は、保守やリベラルなどの抽象的なイデオロギーにはほとんど左右されず、現実的には支持層に左右されています。
政党が政権を取り、政治家が政治家であり続けられるのは、選挙に勝つことが絶対条件であり、選挙に勝つためには支持層から支持を取りつけるしかありませんから。
政党や政治家が自分の政治的信条にこだわり続けることで政策が生まれているわけではありません。
自民党は票田として頼りにしている業界団体から圧力を受けることによって、業界を守る規制・税制をつくることになります。どうしてもそこから抜けきれません。
たとえば、たばこ規制(禁煙ルール)も結局は、たばこ業界や飲食店業界からの圧力で厳しい規制(禁煙ルール)に乗り出せません。
ところが、そのような業界団体の力に頼らず、その代わりにそこからの圧力も気にしなくてもいい小池百合子都知事は、東京都で厳しいたばこ規制条例を制定することができました。これが支持層の違いによる政策の違いです。
特定の業界団体・組織に目配りする政党か、それとも特定の業界団体・組織に配慮せず、一般の有権者や将来世代を意識する政党か。
自民党に対峙する野党になるためには後者であるべきで、特定団体・組織からの圧力に負けない政策・税制をガンガン展開していくことを自民党との決定的な違いにするべきなのです。
そうすることで自民党も負けじと努力する。このように与野党が切磋琢磨することで日本を前進させることが、本来の二大政党制の狙いです。
支持されなければ「仕方ない」の覚悟が支持につながる
歴代の自民党政権もTPPの締結や農業改革では業界団体とせめぎ合いをやりましたが、それでも農協票を頼りにしている以上、農協が徹底的に反対するような突き抜けた改革は困難です。
そうした既得権益層に配慮しない政策や姿勢を野党が打ち出すことが、自民党との違いを明確に示すことになります。
そうすれば、既得権益層の「見える票」は取れなくても、既得権益層ではない人たちの世間に眠っている「見えない票」を取ることはできます。
しかも、世論調査の結果からすれば、有権者の大半を占めるのは既得権益層ではない人たち、無党派層の人たちです。既得権益層は政治活動を必死に行い、何しろ見えやすいので世間において圧倒的多数と錯覚しがちですが、実際はそうではありません。
ですから今の野党には、既得権益のない人たちのための政策を打ち出せば、必ずや、その人たちがついてきてくれると信じて、自民党の支持層とは別の人たちの支持を集めることに本気で取り組むことが必要です。
それで国民の大多数に支持されなければ、もうしょうがない。潔く野党政治家をやめるのみ。このように覚悟を決めた人の言葉には、自ずと魂が宿ります。語れば語るほど迫力を帯び、有権者の心に響き、確実な支持につながるというわけです。