バージョンが新しくなるたびに、機能が追加されていった。2000年に発売されたRIM957は、インターネット経由でEメールの送受信が可能になった。史上はじめて忙しいビジネスパーソンがデスクトップ・コンピューターに届いたメールを、出先ですぐに読んで返信できるようになったのだ。ファイル添付やウェブ閲覧はできなかったが、957は企業や政府機関に大きな変革をもたらした。

RIM957
RIM957(写真=Jarek Tuszyński/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

そして2002年、アップルがiPodで別の分野からポケット型電子機器の市場への拡大を図った頃、RIMは初代ブラックベリーを発表した。

ブラックベリー5810は、双方向型メッセンジャーであり、Eメール機器であり、さらに電話だった。RIMはついに、暫定的ながらも携帯電話事業に参入した。ブラックベリー5810には内蔵マイクがなく、電話として使うときはマイク付きヘッドホンが必要だったが、ユーザーはふたつの機器を持ち歩く必要がなくなった。

翌年、RIMははじめて本格的なスマートフォンを発表した。カラー画面、内蔵マイク、スピーカーに加えて、ウェブ・ブラウザが特色だった。双方向型メッセンジャーとしてだけでなく、電話としての仕様も揃ったことになる。

企業向けスマホ市場で支配的なポジションを得る

テクノロジーセクターでは、新製品や新サービスはたいてい、消費者向けか企業向けかというポジショニングが行われる。ページャーがつねに企業向けであったように、ブラックベリーも最初から企業向けだった。

企業や政府機関といった組織を対象にするB2Bのビジネスは、一本の電話で大口顧客を獲得できる。大企業と契約がまとまれば、その企業は、契約した製品を中心にシステムや手順を組み立てる。研修や乗り換えの費用は膨大になるので、組織の基本的なニーズに応えている限りは、消費者向けの製品よりも多少使い勝手が悪くてもなんとかなる。

その結果、企業相手に取引をする企業は、実際に何を売っているかよりもセールストークに焦点を置きがちだ。ジェームズ・バルシリーはセールストークの達人だった。

RIMは、企業向けスマートフォン市場で支配的なポジションを得ただけでなく、その市場をみずから開拓した。

金融業界や政府の主要人物やインテルのような部品供給業者に直接、働きかけ、企業ユーザー特有のニーズに応えた。大企業が膨大な数の電話を従業員に提供しはじめると、機器にも弾みがついた。

2005年までに、ブラックベリーは「スマートフォン」の同義語になった。市場に敵はいなかった。2007年に収益は30億ドルに達した。機器とそれが即座にもたらす満足感にとりつかれたユーザーたちは、この機器にクラックベリーとあだ名をつけた〔clackには「麻薬」の意味がある〕。

バグばかりだったiPhone、だがジョブズには自信があった

当初iPhoneへの評価は必ずしも良くはなかった。初代の機器にはよくあることだが、ソフトウェアの動きが遅くてバグも多く、評論家から怒りの声さえあがった。だがアップルには自信があった。アップルのリーダーも、RIMのリーダーも傲慢ごうまんで知られている。