またアメリカ・ハーバード大学の校章には『VE RI TAS』というラテン語が刻まれています。これは「真理」という意味で、これも語源は「ヨハネによる福音書」です。「veritas liberabit vos」(真理はあなたたちを自由にする)という有名な句から来ています。
では、原文を見ましょう。
要するにイエスを信じることが真理を知ることであり、真理を知る、つまり神を信じることができれば、人間はあらゆる束縛から解放されて、自由になるのだ、という意味なのです。
ですから、学問の場での真理の追究という世俗的な営みのことではないのですが、学問の道を進もうとする学徒にとって、励ましの言葉となっているのです。
「金持ちが天国に入るのはむずかしい」
アメリカの金持ちたちが慈善団体を作ったり、莫大な寄付をしていたりするニュースがよく報じられます。アメリカには、さまざまな慈善団体が存在しています。アメリカには国立大学がありません。
UCLA(カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校)などの州立大学はありますが、ほとんどが私立大学です。ハーバード大学やスタンフォード大学なども、いずれも私立です。
これらの私立大学には莫大な寄付が集まり、財政状態は豊かです。それだけ資金が集まるのも、一代で大金持ちになったような人たちが寄付をするためです。そこには「マタイによる福音書」の次のエピソードがあるからです。
ある金持ちの青年がイエスに対し、「永遠の命を得るには、どんな善いことをすればよいのでしょうか」と尋ねます。イエスは掟(十戒)を守りなさいと告げます。
青年は、「そういうことはみな守ってきました。まだ何か欠けているでしょうか」と再度尋ねると、イエスは、次のように諭します。
「もし完全になりたいのなら、行って持ち物を売り払い、貧しい人々に施しなさい。そうすれば、天に富を積むことになる。それから、わたしに従いなさい。」青年はこの言葉を聞き、悲しみながら立ち去った。たくさんの財産を持っていたからである。
イエスは弟子たちに言われた。「はっきり言っておく。金持ちが天の国に入るのは難しい。重ねて言うが、金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。」
金持ちのまま死んだら、天国に行けない。これは衝撃的な記述です。そこで金持ちになった敬けんなキリスト教徒は、死ぬまでに自分の財産を処分してしまおうと考えます。結果、寄付の文化が生まれるのです。
聖書の記述が、いかに一国の文化の形成に影響を持っているかがわかります。