政府やメディアがアナウンスすべき要点は3つにまとめられる

コロナ対策においてマスクが無意味なことは、もはや明らかである。持って回った内容の文書で事業者や国民をむやみに混乱させるのではなく、政府やメディアがアナウンスすべき事柄は、端的に以下の3点だと考える。

【1】新型コロナ感染症は空気感染することが定説となったが、マスクでは感染が防げない。ウイルスは不織布マスクの網目より圧倒的に小さいのだから防ぎようがない。なお「着用しないよりマシ」論は、不要。むしろ着けることのデメリットのほうが多い。
【2】日本ではもはや、効果うんぬんではなく、「他人の目」対策でマスクを着用しなければならない空気になっている。そうした風潮は、もう終わりにしよう。
【3】「マスクを着けていない人」のことを恐れる人々に、これ以上、社会全体が合わせる必要はない。

これらのメッセージを発したうえで、「着けたい人は着けてください、着けたくない人は着けなくて構いません。皆さんの自由です」で終わりにすべきだったのだ。

マスクを外そうとしている、あるいはつけようとしている女性
写真=iStock.com/K-Angle
※写真はイメージです

一部の人々が「マスクを外されるわけにはいかない」と考えている

ニューヨークタイムズのコラムニストであるブレット・スティーブンス氏は、2023年2月21日の電子版で「The Mask Mandates Did Nothing. Will Any Lessons Be Learned?」というコラムを発表した。

タイトルを和訳すると「マスクの義務化は意味がなかった。ここから何か教訓は得られるのか?」となる。同コラムは、イギリスの権威ある医療・予防情報提供組織「コクラン」に、「新型コロナウイルスの対策として、マスクには効果がない」と示す論文が掲載されたことを受けて著された。

これまで発表されてきた「マスクには効果がある」と言い張る論文などは、そう主張するために都合のよいデータを集めて書かれたものにすぎない。今回、コクランに掲載された論文は、世界61万827人が参加した78のRCT(ランダム化比較試験:もっともバイアスがかからないとされる試験。そのうち6つは新型コロナ関連)をベースにしたものだ。

コラムの一節を私なりに訳してみたので紹介しよう。

どんな研究、もしくは研究の研究も、これまで完璧だったことはない。科学とは、絶対に完全なる結論がでるものではない。だったら何を言いたいか。これらの分析によると、適切なマスク、そして適切な着用方法には、個人レベルでは何も利点がなかったのだ。個々人はマスク着用で得られる自分なりに合理的な理由を持っていることだろう。そして彼らには、常にマスクを着用する忍耐心があった。それは彼ら自身の選択である。

しかし、集団レベルでのマスク着用の利点ということになると、評決はこうなる。「マスク義務化はクソだ」。効果に疑問を持っていた人々は、効果があると考える人々から苛烈なまでの嘲笑とともに変人扱いをされてきた。さらに義務化が正しいと考える人々からは「デマ野郎」扱いさえされた。多数派である、マスク義務化を支持した専門家らは間違えていたのである。

もう少しまともな世界であれば、こうした専門家の過ちこそ指摘すべきだった。それは、身体的、精神的、教育的、そして政治的コストも考慮のうえで。

まったくもって、そのとおりである。マスクに意味はなかった。しかし、パンデミックが続いていることを視覚的に示すため、さらにはワクチン接種へとつなげていくため、マスクは一部の人々にとって、「民衆から外させるわけにはいかない」アイテムになったのだ。