中国の科学技術力が上がった要因

こうした、広範囲の一般人を情報活動に使う中国の戦法を前に、防諜側は、一体誰を、どこまでの範囲の人間をスパイと考えて対処すればいいかがわからなくなります。

また、全体で見れば大きなスパイ行為であっても、多くの人間が少しずつ関係し、しかも当人はスパイ行為を行っているという自覚もないとなれば、仮に発覚しても司法で裁くことができません。

さらに留学生で言えば、先のサイバー事件のように具体的な指示を受けるだけでなく、実際に留学生として欧米の大学で見聞きした情報を、中国に持ち帰って祖国の発展に生かせ、という大きな方針も打ち出されています。

受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます。

ハッカーのイメージ
写真=iStock.com/Михаил Руденко
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また、実際に研究者の立場で世界中の研究機関や催しに参加し、そこで情報を得たり、意見交換したり、各国の研究者と知己を得たりすることは、当然、スパイ行為にはあたりません。そのため、中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです。

「豊かになれば民主化する」と思っていたが

中国は1988年に中性子爆弾の開発に成功しました。FBIはこれを「中国が独自に開発したものではなく、アメリカの国立研究所から獲得されたものだ」と分析しています。特にアメリカの軍事技術にかかわる研究や開発を行っている機関は、中国としては狙い目です。

アメリカは近年の中国の技術開発能力の飛躍は、留学生や研究者、さらにサイバー攻撃によってアメリカから盗んだ技術によって達成されたものであると考えているのです。

こうした中国式の情報収集は1970年代から行われてきたのですが、ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです。

さらに中国の科学技術力の伸びが想像以上に早く、サイバー領域での中国の活動があまりに活発なことが影響しているのでしょう。そのサイバー攻撃の足掛かりになっているのが、中国製の通信機器なのではないか。