自分とは異なる人との付き合い方に特徴

②摩擦を歓迎する姿勢

2つ目の共通点は、周囲との衝突を避け、その一方で摩擦は歓迎していたことです。

20代から70代までが混在する会社の中には、年齢だけでなく、国籍や文化的背景が異なる多様な社員が存在しています。さまざまな価値観の人々が、互いに完全に分かり合えることはまずありません。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)
越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

その一方で、「自分とは異なる人」との付き合い方で、未来のキャリアが左右されます。

30代で突出した成果を残し、要職に抜擢され、40代以降で出世、転職、起業によって年収1億円以上を稼ぐ人たちがいます。彼らの多くは、20代で一般社員だった頃は、周囲から見て「異質」な存在でした。

しかし彼らの多くは、もともとの環境であるとか、上司や先輩に迎合するのでなく、市場に目を向けて「新しい稼ぎ方」を必死に学んでいました。社外で人脈を築いては、所属する会社の看板に頼らずに生き抜く方法を模索していました。

かといって、社内でぶつかり合っていたわけではありません。「社内調整は単なる手段だ」と割り切り、各部門のステークホルダーと衝突するのはエネルギーの無駄だと考え、業務はそつなくこなしていました。

衝突は回避しますが、摩擦は歓迎していました。異なるバックグラウンドを持つ人との議論を深めて、それまでにない新たなアイデア、新たな取り組みを創り出そうと動いています。

「異質の組み合わせ」が成功を呼ぶ

5%社員は、20代の頃から社外の目線で自社を見る意識があり、所属する組織を俯瞰ふかん的にとらえています。

たとえば、定例会議を3時間行っていること、報告書のフォーマットがExcelであることなど、その会社の独自ルールに疑問を感じます。しかし、だからといって一方的に否定して上司やベテラン社員と衝突することは避けます。

20代の自分が社内でコントロールできる範囲は限定的であることを理解し、できもしない理想像を振りかざして周囲と衝突することは控えます。

社内では「多くの人から信頼を得るゲーム」を進めている感覚で、ムダなエネルギーを使いません。尖った意見を述べて上司に反発してもメリットが少ない、と考えるようです。

しかし、前述の通り摩擦は避けません。むしろ異質との摩擦を歓迎します。摩擦の先にイノベーションがあると知っているのです。

ある流通業の女性5%社員は、「ダイバーシティは女性の役員を増やすことが本質ではなく、異質を避けない文化をつくることだと思う」と笑顔で発言してくれました。

異なる経験、異なるバックグラウンド、異なるアイデアを避けないことで、結果的に異質なものの組み合わせが実現して、業務改善や事業開発に役立つというのが彼らの考えです。