水商売で働く女性が夢や理想を叶えていける場を

また、店で働くキャストに対しても、新しい取り組みを数多く行っている。

たとえば、ライブ配信アプリ「17LIVE」と提携し、キャストの中から選抜したメンバーによる投げ銭ライブ配信を実施している。

店の宣伝になるのはもちろんだが、キャストたちが自分の力で視聴者から投げ銭をもらうこともできる。

活躍次第では、アイドルやモデルとしてデビューする道も開けるかもしれない。

実際、ここから銀座初のアイドルユニットとして、「AMOUR BEAT」が歌手デビューをはたし、活躍の場を広げている。

甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)
甲賀香織『日本水商売協会 コロナ禍の「夜の街」を支えて』(筑摩書房)

自分の夢を叶えるため、今は水商売でがんばる。そんな女の子たちを応援したい。

そのためにも、会社の人事制度のように、勤務態度や売上に応じて給与が上がる仕組みや、店側で個々人の目標を設定し、その目標達成に向けてそれぞれが努力することで、店の売上も上がる、という仕組みを作った。

結果、キャストたちも自発的に成果が上がるような活動をするようになったという。

他にも、キャストたちには収入の一割を投資に回すことを推奨し、投資の勉強会を開いたり、将来起業するための支援活動を行ったりもしている。

「関わってくれる人たちがより良くなるためには? と考えていったら、こういうかたちになっていったんです」と泉緒は言う。

自分の夢を追いかけるキャストたちが、店を盛り上げ、接客も工夫し、努力する。

その結果、来た客は楽しく飲める。そうすれば、店やキャストの売上も上がる。それによって、キャストたちは自分たちの夢にまた一歩、近付いていく。

さまざまな人生のアップダウンを経験し、今は経営者として水商売に携わる泉緒。

かつては憎しみすら覚えた「銀座のホステス」として自らも活動するかたわら、水商売で働く女性たちが自分の夢や理想を叶えていける場を提供する。

そんな彼女の挑戦は、まさに今、始まったばかりだ。

銀座初のアイドルユニットAMOUR BEATのステージ。
銀座初のアイドルユニットAMOUR BEATのステージ。
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