内発的モチベーションの高い脳へ変化

他者からの期待なので、脳の外発的モチベーションに依存していますが、これらを高めていくと、最初は外発的モチベーションが高くても、やがて内発的モチベーションの高い脳へと変わっていきます。

脳が描かれた光る電球を持つ手
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自己決定理論が示すように、最初は第1段階の「外的調整」による外発的な影響を受けていますが、相手からの期待によって第2段階の「取り入れ」、つまり義務感や責任感が生じ、仕事をこなしていくうちに必要性を認識できるようになるので段階が上がり、「自律性」も増します。その結果、最終段階である内発的モチベーションが増大するのです。

以上のように、まずはやる気を構成する3つの構成要素をもとに行動が達成可能か、「自分自身への期待」を確認すること。そして、自己決定理論の3つの基本欲求の「有能感」「関係性」を高めるような「相手からの期待」について考えてみることが大切です。関係性が高まると、自分自身だけでなく相手のモチベーションを高めることにもつながるのです。

脳が「当たり前」と感じるほど習慣化する

脳には、同じ経験が繰り返されることで「当たり前」と感じる「馴化」という機能があります。脳の馴化は、モチベーションを下げるだけでなく上げる効果も持っています。「最初は面倒だったけれど、続けていくうちに慣れてきた」という「習慣化」の力です。この機能を使って、「やらないと落ち着かない」と感じるほどに習慣化すればモチベーションも高まるのです。

たとえば、極端にいえば朝にコーヒーを飲まなくても死ぬことはありませんが、何も取りかかれない人もいます。準備が面倒なので気が進まなかったけれど、ある日通勤前にひと泳ぎしたら頭が冴えて、それ以来、朝に泳がないとすっきりしないといったケースもあるでしょう。

仕事に関しても同様です。最初は面倒だったり集中しないとできないので疲れるような作業でも繰り返すことで習慣化し、「手続き記憶」のようにストレスなく無意識的にこなせるようになります。出勤の挨拶、朝のメール確認、定例会議などは面倒に感じるときがあるとはいえ、まったくやらないと不安になったり、一日の仕事のリズム感がとれなかったりなどパフォーマンス自体も下がります。習慣化による馴化にはモチベーションを上げる効果があるのです。