上司や教師は「努力そのもの」を褒めてほしい

多くの人は努力が苦手で、なるべく楽な方法をとろうとします。これはいろいろな理由が考えられますが、内発的・外発的な枠組みで考えると、そもそも現代社会の多くが外発的報酬に基づいて成り立っていることがあげられます。

成果主義の昇任・昇給システムのもとで努力する、勉強をがんばった成果としてテストの点数や成績がアップするといったことが代表的な例でしょう。このようなシステムでは、最終目標は努力自体ではなく昇任・昇給、点数や成績であり、なるべく楽にその目標を叶えたいと思うのは自然な流れです。そのため楽な方法を考えて、できるだけ「努力しなくてすむような努力」をしています。これでは自分の成長にとっても、また社会の発展にとってもマイナスです。

一方で、報酬を順位やお金ではなく行動に対する努力にすると、最初は順位やお金といった外発的報酬のために努力していても、しだいに行動が習慣化してきて、その後は努力そのものが内発的報酬となり、外発的報酬がなくても続けられるようになります。

上司や教師も、努力の「結果」を褒めるのではなく、「努力そのもの」を褒めることが大切です。それによって、結果にかかわらず報酬が得られるため努力しつづけるようになり、最終的には報酬がなくても努力自体が好きになる(努力に対して自分で報酬を与えられる)でしょう。

子供を褒める両親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

「結果より過程が大事」は正しかった

最近の研究によると、教師の指導スタイルが学生のモチベーションに大きく影響していると示されています。生徒の努力や戦略に対する賞賛や批判は、成長の余地があると本人が認識することにつながり、柔軟な知性を生み出しやすいそうです。

教師が生徒に与えるフィードバックが、生徒の意欲にプラスにもマイナスにも影響します。教える立場にある人は相手が「やる気があるかないか」よりも、やる気を阻害するようなフィードバックを自分がしていないかを見つめ直したほうがいいでしょう。

努力や戦略に対する報酬が最終的に良い結果を生む理由は、よくいわれる「結果より過程が大事」とも通じます。何事も最初からうまくできる人などいません。誰もが失敗をもとに解決方法を模索し、脳内でも「トライアンドエラー(予測誤差の解決への努力)」を繰り返して最終的に解決しています。長引くこともありますが、この試行錯誤こそが最高の解決方法や技術の獲得につながります。