部下のモチベーションを高めるにはどうすればいいか。脳科学者の大黒達也さんは「人は努力そのものを褒められると、結果にかかわらずモチベーションが高まり、努力し続けられる。『結果が出なければなんの意味もない』と切り捨てるのはもったいない」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、大黒達也『モチベーション脳』(NHK出版新書)の一部を再編集したものです。

上司に資料の確認をしてもらうビジネスパーソン
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「努力」×「成果」×「魅力度」

モチベーションを上げるための重要な概念のひとつに「期待理論」というのがあります。これは、心理学者ビクター・ブルームが提唱し、その後レイマン・ポーターとエドワード・ローラーが系統立てました。期待理論によると、やる気は次の3つの構成要素の掛け算によって決まります。

「努力」×「成果」×「魅力度」

期待理論では3つの要素のすべてが期待できなければ、モチベーションが上がることはありません。逆にこの期待理論を応用して目標を立てることでモチベーションが高まり、目標の達成確率も上がります。

とくに重要なのは、「自分にはできるという実現可能性」と「その行動に対する魅力度」です。そもそも目指すべき目標が魅力的でなくては、やる気は起きません。また、魅力的であっても「やればできる」という自信がなければ、努力する気にならないでしょう。

「あなたならできる」が成果を高める

つまり、モチベーションを上げるためには、(1)努力が成果へと結びつくことが期待でき、(2)成果が報酬へと結びつくことが期待でき、さらに(3)報酬も魅力的でないといけないのです。

また、期待とモチベーションに関連したものに「ピグマリオン効果」があります。これは、他人からの期待によって作業の成果が高まる心理的効果のことをいいます。

仕事でいえば、上司から期待されるとやる気が出て、結果的にもうまくいくような状態です。相手から「あなたならできる」といわれると自信がついてモチベーションが上がったり、「あなたがいないとだめだ。必要な人材だ」といわれたりすることで「やってやるぞ」という意気込みが湧きます。これは、自己決定理論の3つの基本欲求のうち「有能感」「関係性」に相当するといえます。