劇場版アニメ『THE FIRST SLAM DUNK』の快進撃が止まらない。原作者で監督・脚本も兼ねる井上雄彦氏の演出が高く評価され、2月上旬に興収100億円を超えた。スポーツライターの酒井政人さんは「泣かせるストーリーも秀逸ですが、主人公が試合の窮地で繰り出した“クワイエットアイ”のようなルーティンは多くの一流選手がしているメンタルの強化術で、ビジネスパーソンにも役立つ」という――。
映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式ホームページより
映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式ホームページより

泣かせる大ヒット映画『スラダン』は集中ノウハウ満載

現在公開中の劇場版アニメ『THE FIRST SLAM DUNK』(以下、スラダン)の快進撃が止まらない。67日間で興行収入が100億円を突破。1990年代に大ヒットした井上雄彦の名作が20年のときを超えて大ブレイクしている。

46歳の筆者は小学生の子供を連れて観に行ったが、感動しすぎて「なんで泣いている?」と呆れられてしまうほどダーダー泣いてしまった。バスケ部だったわけではない。しかし、スポーツに青春を費やした者として、スラダンのアニメをほぼリアルタイムで観ていた者として、胸熱シーンがいくつも登場したからだ。

『スラダン』の“主人公”は宮城リョータ。耳のピアスがまぶしい、主人公たち部員が属する無名校の湘北高校のポイントガードだ。身長168cmの2年生は、小柄だがスピードが持ち味で、度胸とふてぶてしさを持ち合わせている。

一方で気弱な面もある。王者・山王工業高校にビビったリョータがひとりでランニングしていたときに、マネージャーの彩子が「つらくなったときは手のひらを見よう」と決めた。

インターハイの山王工戦は、絶対王者の鉄壁のゾーンプレス(守備戦略)に湘北は攻撃の糸口をつかめずにいた。どれだけ攻めても、相手にボールを奪われる。その繰り返しに、選手たちはプライドを引き裂かれ、意気消沈していく。

タイムアウトをとる湘北。安西監督は「切り込み隊長」であるリョータにフロントへのボール運びを託した。コートに戻ったリョータは彩子が手のひらに書いた「No.1ガード」の文字を見て、自信と落ち着きを取り戻す。リョータの再躍進もあり、ほどなくして湘北が反撃を開始していくことになる。