イチローのカレーにも深い意味がある
クワイエットアイでいうと、日米のプロ野球で伝説を作ったイチローさんも打席時で実践していたと思われる。
イチローさんは打席に入ると、後傾気味に重心を取り、右手でバットを垂直に伸ばして、左手を右上腕部に添える。そして眼の焦点をスコアボードに合わせた後、バットにも合わせていた。これらの動作はルーティン化しており、いつも通りの動きを行うことで、精神を落ち着かせ、集中力を高めるメリットや効果があるのだ。
なおルーティンを構築するには、“ファイブステップ・アプローチ”という5つの段階を踏むことが提唱されている。
まずは心身の状態を整える「準備」をしながら一定の動作を行う①。同時にプレーが成功する「イメージ」を高めていく②。次にターゲットに向けて、「1点を見つめて集中」③。ターゲットへの意識を保ちながら「静かな心で実行」④。プレーの後には、パフォーマンスの「評価」を行い、今後のプレーに生かしていく⑤のだ。
昨年、イチローさん率いるチームが高校野球女子選抜とエキシビションマッチを開催した。試合終了後、イチローさんがおこなった女子選手全員を前に約55分間にわたる“講義”が話題になった。なかでも注目を浴びたのが、メジャー時代の朝食に食べていた弓子夫人のお手製のカレーライスに関することだ。
「信じたことを続けられる能力はある」というイチローさん。ビジターのときはハンバーガーなどを食べていたというが、ホームゲームでは噂のカレーライスをほぼ食べていたという。
「縁起担ぎみたいなものだけど、正解か不正解か、答えにたどりつくまで続けてみないとわからない。それに同じものを毎日食べ続けていると、わずかな違いに気付くようになる。同じメニューなのに味が違う、作っている人が違うのかなというくらい。わずかな違いに気付ける感覚を持ってほしい。(野球を)うまくなろうと思ったら、それはすごく大事。ずっと同じことをできるのは僕のとりえではある」
打者として3度の三冠王になった落合博満さんも中日監督時代に“定点観測”を大切にしていた。同じ場所から、同じ選手を毎日見ることで、選手の状態を見極めていたという。
日々、同じ行為をやり続けることに加えて、どこが違うのか。しっかりと観察することで、スキルの上達につながっていく。