セルフサービスの飲食店は絶滅する
回転寿司は今後どうなるだろうか。
全体的な流れとしては、提供前の包装されていない食品にお客が直接手を触れる可能性のある仕組みは、今後はなくなっていくだろう。それは回転寿司に限らず、サラダバーや、お客が自分で商品をトングで取るベーカリー、セルフサービスの総菜店など、各種のバイキング形式(ビュッフェスタイル)も含む。これらには、コロナ禍以前から衛生上の懸念が指摘されており、実際に複数の食中毒事件もあった。
また、衛生の問題だけでなく、現在は食品に関わる多くの企業がフードディフェンスに神経をとがらせている。フードディフェンスとは、食品に対する悪意ある異物混入や改変を防止する考え方と仕組みのことだ。
たとえば、今般は食品や食器への唾液の塗り付けが問題となったわけだが、他の、より有害な物質(致死的なものを含む)を混入することも可能な状態があったことは否めない。
回転寿司もバイキング形式のレストランも、健全に利用する分には楽しいものだが、以上のような理由から、無防備な状態のまま、この仕組みを続けることはできないように筆者には思える。
カメラで客の行動を逐一把握することは技術的に可能
ただ、それらを温存し得る対策がないわけではない。
レーン上を回転する寿司にカバーを設置しているくら寿司は、カバーの不審な開閉を検知するカメラを導入すると発表したが、この種の対策は今後も進むだろう。カメラに映っている人物が何をしているかを判別する基本的な技術は既に確立されており、今後はカバーの開閉以外のお客の行動も監視、判別されるのが普通になっていくだろう。
そしてその種の技術は、犯罪防止だけでなく、お客のニーズ把握にも利用されていくだろう。たとえば、あるお客がお冷やを欲しそうにしていたり、ドリンクのグラスを倒して対応が必要であることなどを、いち早くスタッフに知らせたり、ロボットによる対応を起動したりといったことが考えられる。
一方、顔認証により、来店したお客がどこの誰であるかを判別する技術もすでにある。これらを組み合わせると、迷惑行為をしたお客の入店をブロックする仕組みも技術的には可能だろう。しかし、そうすることによって、招かれざるお客のブラックリストが企業を超えて共有され、どこでも外食することができない、どこでも買い物ができないという人が発生してしまうという、新たな社会問題を生じさせるかもしれない。