「迷惑行為禁止」の注意書きは抜本的な対策にはならない

では店側はどのような対策を講じればいいのか。

最初に考えられることの一つは、店内に“ひとの目”を取り戻すことだろう。スタッフの巡回回数を増やしたり、パーティションの高さを下げて死角を作らなくするなどが考えられる。しかし、それは省人化といった経営上の要求や、快適性の向上というお客のニーズには反する。

客席の様子を捉えるモニターカメラもあるが、最近はレンズがどちらの方向を撮影しているのかが外からはわかりにくいドームカメラが主流となっており、カメラの“視線”を感じにくくしているので、「見られている」と感じさせることによる“抑止力”にはなりづらくなっている。

もちろん、迷惑行為をさせないための注意書きや警告などを絵や文字で表示するといった方法もあるが、善良なお客にも「あなたは悪い人かもしれない」と言っているようで印象の良いものとは言えない。そもそも、人が行うことを言葉やルールで抑え込もうとしても完全な防止策とはならない。それは迷惑行為に限らず、ミスや事故の防止についても言える。

セブン‐イレブンがコーヒー抽出機に導入した対策

確実な方法はハードで抑え込むことだ。

それには古典的な例がいくつもある。シュガーポットの砂糖を例に挙げれば、使い過ぎたり、いたずらをしようとするお客への対策として、店側は個包装の砂糖(ペットシュガー、スティックシュガー)を採用した。個包装のコーヒーのクリームも同様だ。つまようじも、個包装のものもあれば、1本ずつしか取り出せず、なおかつ出したものは戻しにくい構造の容器もある。

「セブン‐イレブン」が導入している新しいタイプのコーヒーの抽出機は、お客がセットしたカップのサイズを機器が自動的に判別して適量のコーヒーを抽出するようになっている。同チェーンでは、レギュラーの価格でラージサイズを入れようとしたり、より価格の高いカフェラテを抽出して持ち去るお客が問題となっていた。今後カフェラテ用のカップを判別させる機器を導入すれば、そのような逸脱をハードでブロックすることができる。

自動販売用コーヒーマシンの手押しボタン
写真=iStock.com/Andrey Rykov
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レストランでなくとも、たとえば宝飾店で商品を裸の状態で陳列して「盗むな」と表示しても効果は期待できないから、鍵付きのガラスケースの中に陳列する。今回、「スシロー」が発表したレーンにアクリル板を設置するという対策の方向性はこれと同じと言える。

こうしたハード面の工夫によって迷惑行為や犯罪ができないようにすることは、絵や文字での注意喚起よりも、お客に悪い印象を与えずに済む。しかも、望ましくない行為を不可能にしてしまうのだから、“出来心”でもお客を犯罪者にしてしまうリスクを減らすことができる。