円安はさらに進むのか、円高に戻るのか。見通しが難しい中で消費者も企業も動きにくい状況が続いている。お笑い芸人のパックンことパトリック・ハーランさんとエコノミストのエミン・ユルマズさんに、円安の行方と日銀の利上げ、FRBの利下げの見通しについて語ってもらった――。
お笑い芸人のパックンさん(右)とエコノミストのエミン・ユルマズさん。
撮影=遠藤素子
お笑い芸人のパックンさん(右)とエコノミストのエミン・ユルマズさん。

1ドル200円でも誰もが納得する政策とは

――エミンさんは前回の対談で円安がさらに進んで「1ドル200円もあり得る」とおっしゃっていますが、最近の状況を踏まえて考えに変化はありますか。

【エミン】大きな変化はありません。日本も大きく金融政策を変えていませんし、インフレの状況も変わっていないからです。1ドル200円は普通にありうるでしょうね。

【パックン】1ドル200円はドルが高すぎると僕は思いますよ。これも前回の対談のときと変わっていません。ただ前回は「1ドル135円くらいがしっくりくる」と言いましたけど、「もう少し上でもいいかな」と思っています。150円前後の水準がしばらく続く可能性も十分にあるとは思いますね。

ただ、為替レートよりも問題なのは、日本の人たちの収入だと思います。日本の会社員の給与が部長クラスで米国の小学校の先生以下というのは、やっぱり納得できません。長期的に日本のみなさんの収入を倍増させるか、為替を調整するか、どちらかが必要だと思います。

以前、朝日新聞にも書きましたけど、日本には生活費に困っている人が多い。いまの為替レートでもいいから、賃金を倍増させれば解決しますよ。購買力の問題だから。余剰金が増えれば、為替レートが変わらなくてもいいし、200円になってもかまいません。

円安の流れを止めるための選択肢は1つしかない

――エミンさんは円安をどうすべきだと思いますか。

【エミン】これは、金融政策を調整するしかありません。日本の賃金はそう簡単に上がらないでしょう。少しずつは上がるかもしれけど、目先は厳しいので金融政策をゼロ金利のままにするのは不可能です。金融政策をある程度正常化させれば、少なくとも円安の流れは止まると思いますよ。

ただ、為替の水準そのものにさほど意味はなくて、パトリックさんがおっしゃるように変動が止まれば、その他のものはそれに合わせてきます。1ドル150円であれば150円、130円であれば130円で止まれば、他のものはそれに合わせてくるのですが、円安の流れが止まらないのが一番危険です。

もしくは不安定な動きもよくありません。輸入業者にしても輸出業者にしても、為替の想定ができなくなってしまうので、取引を控えるようになります。

消費者も同じです。ここにきて日本の航空会社からも苦言が出始めています。みんなが海外旅行へ行くのを控えているからです。仮に1ドル150円であっても、変動が止まれば海外旅行に行くはずです。半年後、1年後にどうなるかがわからないから、動きようがない。ある程度は為替を安定させないといけないのですが、それは金融政策で対応するしかないでしょうね。

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