「日本の利上げ」+「アメリカの利下げ」で円高はどこまで進むか

――アメリカが利下げをして、日銀が利上げをした場合、為替はどのくらい円高方向へ動くでしょうか。

【エミン】為替の予想はまったく意味がない。ただ、アメリカが何%利下げして、日本が何%利上げするかにもよるけど、1ドル130円程度で落ち着けば、日本側もアメリカ側もおそらく……。

【パックン】満足。

【エミン】そう。満足できると思う。

【パックン】僕も130円台がしっくりくるから、そのあたりがいいと思う。日米の金利差はいま5%ぐらいだけど、それが3%に減っても、日本にお金を移動したほうが得とはいえない。3%の損になるし為替手数料もある。だから、世界のお金が円買いになるとは思えない。もちろん、日本の金利が5%でアメリカが1%に入れ替わったら話は違うけど。

【エミン】金利差が縮まっても円買いにはならないかもしれないけど、問題はいまの実質金利の差だよね。アメリカの金利が5.5%でインフレ率が3%だとすれば、実質金利は差し引き2.5%でしょ。日本は金利0%でインフレ率はアメリカと同じ3%程度だから、実質金利はマイナス3%。実質金利の差は5%以上あるわけ。

たとえば、日本のインフレがもう少し落ち着いてくる、あるいは日本が利上げしてアメリカが利下げする。それによって実質金利の差が3%以下に収まれば、円キャリートレード(金利の低い円で借入、その資金を外貨に転換して運用する手法)の魅力がなくなって「別の通貨でやろう」となる。それはある程度、円安に歯止めをかけると思う。

パトリックさんがおっしゃる通り、本格的な円買いが起きなくても、少なくともいまの円売りは止まるでしょう。それだけでも効果はあると思う。

スタイリング=末次秀彦(パックン)衣装協力=perky room STYLIA(エミン) 構成=向山 勇

パトリック・ハーラン(Patrick Harlan)
お笑い芸人

芸名パックン。1970年、米・コロラド州出身。93年、ハーバード大学比較宗教学部卒業。同年来日。福井県で英語教師を務めた後、97年、吉田眞と「パックンマックン」を結成。著書に『逆境力』(SB新書)など。

エミン・ユルマズ(Emin Yurumazu)
エコノミスト

トルコ・イスタンブール出身。2004年に東京大学工学部を卒業。2006年に同大学新領域創成科学研究科修士課程を修了し、生命科学修士を取得。2006年野村證券に入社。2016年から2024年まで複眼経済塾の取締役・塾頭を務めた。2024年にレディーバードキャピタルを設立。著書に『夢をお金で諦めたくないと思ったら 一生使える投資脳のつくり方』(扶桑社)、『世界インフレ時代の経済指標』(かんき出版)、『大インフレ時代! 日本株が強い』(ビジネス社)、『エブリシング・バブルの崩壊』(集英社)『米中新冷戦のはざまで日本経済は必ず浮上する 令和時代に日経平均は30万円になる!』(かや書房)などがある。