自分だけの「ルーティン」を確立する

もしくは、日常を非日常空間に持ち込んでしまうのも良いでしょう。僕がやっていた「ルーティン」もこの手法の一つです。ルーティンとは「決まり切った動作」という意味。いつも行う決まり切った動作をきっかけとして、「あぁ、いつも通りなんだ」と体に認識させるテクニックのことをルーティンというのです。

これは有名なスポーツ選手でもやっていることです。例えば、元プロ野球選手であるイチロー選手は、バッターボックスに立った際に、必ず袖を軽くまくり、バットを真正面に掲げながら構えに入ります。または、体操の内村航平選手などは、演技に入る前に両手を前に伸ばし、距離を測るような動作をします。それ以外にも、さまざまなプロフェッショナルたちが取り入れているのが、このルーティンなのです。

実際にルーティンを集中すべき場面で取り入れていた僕としては、緊張をなくすのに一番効くのはこのルーティンを導入することだと考えています。ルーティンとする動作はなんでもよく、「いつも同じタイミングで同じようにできること」ならすべての動作がルーティンとなりえます。

僕のように深呼吸するだけでもいいですし、必ず柔軟をするとか「外郎売」を朗読するとかでもいいでしょう。重要なのは「大事な場面の前に行うことができる手軽な動作である」ということです。

服装も「いつも通り」のほうが安心できる

それほどおススメできる超万能選手ではあるのですが、一点だけ弱点も存在します。それは、「ルーティンが体に定着するまで時間がかかる」ということ。

ルーティンによる鎮静作用の源は「いつも行っている行為である」ことに大きく依存しています。そのせいで、短い期間行った程度では、あまり効果を得ることが難しいのです。半年から1年程度のスパンで、長い準備期間を必要としますが、それを補って余りあるほどのリラックス作用を持ちますから、緊張しがちな方にはぜひ試してほしいと思います。

「いつも通り」を保つための技術で、変わったものとしては「いつも通りの格好を決めておく」というものがありました。下手に勝負服で決めてしまうと、そのせいで「特別な場なのだ」という思いが増して、緊張してしまいます。ですから、大事な試験であるからこそ、逆にいつも通りの格好で行くのだというのです。

確かに、いつもと変わらない服装で臨むことができれば、緊張しなさそうです。ただ、あまりにもリラックスしすぎて寝てしまわないように気を付けなくてはいけませんね。