マスクの転落原因はEV神話崩壊と自爆

世界一の金持ちの座が移動した。米ブルームバーグ通信は世界富豪ランキングを毎日更新しているが、2022年12月13日、高級ブランドで有名なモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)のベルナール・アルノー会長が、保有資産約1708億ドル(当時のレートで約23兆円)で1位になった。

LVMHのベルナール・アルノー会長(右)とテスラのイーロン・マスクCEO。
LVMHのベルナール・アルノー会長(右)とテスラのイーロン・マスクCEO。(時事通信フォト=写真)

それまで約1年3カ月間、トップの座を守り続けた電気自動車メーカー・テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、保有資産約1640億ドルとなり、2位に転落した。年が明けてもその差は開き続け、1月16日時点で2人の差は540億ドルに拡大している。

この交代劇はベルナール・アルノーの資産が増えたことではなく、イーロン・マスクの資産が減ったことによって起きている。イーロン・マスクはピークで3400億ドル(当時のレートで約38兆円)の資産を持っていた。しかし、資産の大部分を占めるテスラの株価が、22年の1年間で約65%下落してしまった。これはイーロン・マスクが1人で勝手に転んだようなものだ。

なぜテスラ株は売られたのか。1つには、EVに対する見直しの動きがある。まず充電の問題だ。世界で最もEVの普及が進んでいるノルウェーは、22年の新車販売の約8割がEVになった。しかし、普及に対して充電所が足りず、チャージするために長蛇の列ができるようになった。