優秀な人材の日本離れが加速する

ファーストリテイリングが本社や「ユニクロ」などで働く国内約8400人を対象に、2023年3月から、年収を数%から最大で約40%引き上げると発表した。具体的には、新入社員の初任給は現行の25万5000円から30万円に(年収で約18%増)、入社1〜2年目で就任する新人店長は月収29万円を39万円に引き上げる(年収で約36%増)。

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。(時事通信フォト=写真)

同社はリリースで、賃上げの背景として日本が「海外に比べて報酬水準が低位に留まっている」ことをあげ、「企業として世界水準での競争力と成長力を強化するため」の改定だと説明した。

日本の賃金は、たしかに安い。2017年に中国の通信機器大手、華為ファーウェイの日本法人が日本で「初任給40万円」の条件で採用活動を行った。日本人エンジニアが殺到したが、本社がある深圳しんせんでは初任給が約80万円だ。初任給40万円は日本人には高給に見えても、世界のトップ企業と比べると半分でしかない。中国企業が「日本の人材は安い」と高笑いしているのが実態だ。

日本の賃金の安さは、データにも表れている。OECD(経済協力開発機構)の平均賃金調査(21年)によると、日本の平均賃金は3万9711ドル(1ドル=130円換算で約516万円)で、OECD加盟国38カ国中24位。OECD平均の5万1607ドル(約670万円)を大きく下回っている。1位アメリカ7万4738ドル(約971万円)と比べると、ほぼ半分だ。