異次元の対策よりごくふつうの対策を

少子化が止まらない。厚生労働省が2023年1月に発表した人口動態統計速報値によると、2022年1〜11月の出生数は前年同期に比べて3万8522人減少した。残りの12月も同様の傾向が続いた場合、2022年の出生数は、統計開始以来初めて80万人を割り込む見通しだ。現在のアラフィフ(50歳前後)が生まれたころは、第2次ベビーブーム(1971〜74年)で、出生数は年間200万人以上。この50年で生まれてくる子の数は、約6割減った。

この状況に対して、岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」に取り組む方針を打ち出し、小池百合子東京都知事も「18歳以下月5000円程度の一律給付」を発表した。しかしバラマキの競争をしたり所得制限を撤廃したりなど、付け焼き刃の対策をしたところで効果は薄い。この流れを止めたければ、少子化に対する本質的な理解が必要だ。

少子化は先進国に特有の現象である。先進国では、1970年代から出生率が軒並み下がり始めている。一方、発展途上国はいまも出生率が高水準だ。これは少子化の背景に経済発展があることを示している。