公共放送のNHKにエンタメはいらない

元日銀マンは、はたしてNHK会長として適任だろうか。2022年12月5日、NHKの経営委員会は、23年1月に任期満了になる前田晃伸会長の後任に、日本銀行元理事である稲葉延雄氏を全会一致で選出した。

稲葉延雄NHK新会長
稲葉延雄NHK新会長。(時事通信フォト=写真)

稲葉氏は日銀理事を退任後、リコーで特別顧問や取締役会議長など務めた経験があるものの、それは上がりポジションのようなもの。34年勤めた元日銀マンとしてのアイデンティティのほうが強いだろう。日銀もNHKも公共性が求められることでは共通している。その点を見れば、稲葉氏が適任に思えるかもしれない。しかし、本人は会見でこのように語った。

「質の高い報道、ドキュメンタリー、エンターテインメントを制作し、発信するために一番大事なのは、公共的な使命感に基づいて制作に専念、まい進できる組織を作っていくことだ」

公共放送なのだから、公共的な使命感を持つのはたいへん結構なことである。しかし、発信すべき番組にエンターテインメントが入っているところに、大きな勘違いがある。この認識のまま公共性を追求すると、「ネットフリックスより高いのに見る番組がない」と揶揄やゆされる受信料問題を含めて、NHKをますます迷走させるだけだろう。