「モノと情報の流れ図」の本当の目的

業務カイゼンのツールとして同社が使っているのが「モノと情報の流れ図」です。「モノ」の流れと、「情報」の流れを1枚の図にまとめたものです。

書き方ですが、何よりもまず現場に行って作業を眺めます。そして、やっていることを理解したら、あとは物の動きを示す矢印と、情報の動きを示す矢印を記していけばいいだけ。

難しいことではありません。誰でも時間をかけずに作ることができます。

モノと情報の流れを1枚にする理由は全体をながめることの重要性です。ひと目で全体を見れば、仕事のダブりとムダがあらわになるからです。

例えば、長い生産ラインの途中と最後で検品をやっていることがわかったりします。それなら、最後に1回やればいいじゃないか、もしくは、工程のなかで作り込んで、自動的に検品もできるようにすれば、検品単体の仕事はいらないじゃないかとなるわけです。

1枚の図にしてみればわかることがあります。

一番大切なのは「滞留」を見つけること

人は「自分がやっている仕事は絶対にやらなくてはならないことだ」と思い込みがちです。しかし、モノと情報の流れ図を書いてみれば、重複した作業だったり、ムダな作業だったりと自分自身で納得することができるのです。

「ムダだからやめろ」と言われるより、事実を突きつけられたほうが納得してムダをやめることができます。そして、モノと情報の流れ図を書くことは、仕事をするとき視野を広く持つことに役立ちます。

現場を広く見つめて、そこから問題点を探す。図の完成よりも、書くために見ること、見た後にまとめる行為に意味があるのです。

ここでモノと情報の流れ図の現物を載せておきます。

【図表】モノと情報の流れ図
図版提供=トヨタ自動車
上の図を見た担当がカイゼン点を記入したもの

モノと情報の流れ図については検索すると、トヨタOBが解説しているそれがたくさん出てきます。しかし、現在、トヨタの人たちが書いているものは非常にシンプルになっています。

まず工程が書いてあります。そこに線で部品、仕掛しかかりモノ、生産予定の数値(情報)が表現してあります。そして、一番大切なのは山の形をした記号です。山の形はそこにモノもしくは情報が滞留していることを表します。