今後の経営は成り立つのか

日本では人口減少が続き、今後はより一層の減少が考えられます。そのような日本で、地方で展開するファミール産院の経営は成り立つのでしょうか?

出産に関わる収入でいえば、一人の患者が産院に支払う単価(50万~70万円)が比較的高い。最低限度の出生数が見込める地域であれば、出店することは可能です。

整体やフットマッサージ、エステなどのビューティーサービスを付加して、お産以外の収入をプラスしようとしています。なにより、産後うつなどの問題に対処するため、産後ケアにも初期から力を入れているのが伺えます。これは、お産後にもさまざまな相談を受けることで、継続した関係を作る努力をしています。そうしてリピート率を上げています。

目標は「日本の出生率の1%」

「ファミール産院では、産前から産後まですべてのスタッフが妊婦さんとそのご家族に寄り添うというのを定義にしています」。そう話す院長には、「人口増加に貢献して、地方の灯を消さないように努力していきたい。今後、産院を全国に増やしていき、日本の出生数の1%のお産ができるグループになることが目標です」との強い思いもあります。

決して理想を話しているだけではないと私は思います。

現在経営する6つの産院のうち、2つは事業継承のオファーを受けたもの、ひとつは地方行政からのオファーです。ファミール産院はこうした要請をできるだけ受けようと努めています。

地方行政からの出店オファーであれば、地域のための出店と考えて、家賃などの条件も好条件にしてくれる可能性もあります。総量規制にも引っかかりません。地方都市にとっては移住や出生など、人口増につながる施策は何としてでも取り組みたいものだからです。

別の産院からの事業継承のオファーも同様です。請われて出店するので、軋轢なく今までのやり方をスムーズに踏襲できます。実際、トラブルになったことはないと言います。

このようなバックアップもあって、小商圏でも成り立つ産院になり得ています。

現在も同法人には地方行政からの出店オファーがいくつも舞い込んできているそうです。

儲けではなく、地方に目を向け、地域の子どもを絶やさないようなお手伝いをすることを第一に院経営を進める産院。だからこそ、妊婦さんが何度も通いたくなる奇跡の産院になっているのです。

人口減をマイナスにとらえずに、どうやってプラスに変えていけるか。

人口減少社会に真正面から立ち向かう産院。新しい時代の経営のヒントになりそうです。

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