相手に矛盾を抱かせ、モヤモヤさせる
でも、なぜ嫌っている相手を次第に受け入れ、親しく思うのでしょうか。
この心の動きは「認知的不協和理論」という心理作用で説明がつきます。認知的不協和とは、「人間が自己の決定に対して不安を感じ、自己維持のために自己正当化行動を生起させること」(Festinger,1957)。なんだか難しい言い回しですが、ざっくりいうと、こうなります。
・私たちは自分の中に矛盾した意見や考えを同時に持つことがある
↓
・その矛盾に気づくと、モヤモヤして落ち着かなくなる
↓
・落ち着かない状態はイヤ
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・そこで、モヤモヤ感を解消するため、自分の考えを強引に歪めたり、本心とは異なった行動をとってしまったりすることがある
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・その矛盾に気づくと、モヤモヤして落ち着かなくなる
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・落ち着かない状態はイヤ
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・そこで、モヤモヤ感を解消するため、自分の考えを強引に歪めたり、本心とは異なった行動をとってしまったりすることがある
つまり、「お願いごとを聞き入れているオレがコイツのことを嫌いなのはおかしい」「本当はいいヤツなのかもしれない」と認知的不協和の解消が生じ、嫌悪感や敵対心が消えていくようになるのです。
相手側のボスを攻略するとき、だれから攻める?
さて、ここからは一種の応用問題です。
あなたが社内の派閥争いや、取引先を巡るライバル企業との戦いを攻略しなければならないとします。相手側のボスを落とすべく外堀から攻めていく場合、あなたなら、ベンジャミン・フランクリン効果を狙ってどのあたりからアプローチするでしょうか?
実は、組織内の対人関係では誰をどの順番で味方に引き込むかが非常に重要なポイントになってきます。
たとえば、図表1のように敵対関係が可視化されたとしたら、あなたはA~Cのどの人からアプローチしますか?
正解は敵陣のボスに最も近い「側近のA氏」です。これは多数派をつくっていくために、誰から落としていくかで結果が変わってくるという考え方で(Sebenius,2017)、中国の戦国時代の外交戦略にも使われていました。自分との距離が遠ければ遠く、かつ、敵陣のボスとの距離が近ければ近いほど、引き込むのに時間がかかるものの、成功したときの効果が絶大だからです。
最後、相手がベンジャミン・フランクリン効果であなたをうまく利用しようとしてきたときの防衛方法をお伝えします。