本部が渋谷区松濤から地方都市へ移転する可能性も大
確かに、法人格の剥奪は国民の納得が得られるひとつの手段ではある。しかし、同時に別の問題も生み出すリスクも考えなければならない。
現在、旧統一教会は都内の一等地、渋谷区松濤に本部を構える。固定資産税などが加算された場合、地方都市などに移転する可能性も大いにあり得る。すると、移転地で新たなトラブルも発生しかねない。
サークルのような任意団体になれば、水面下での活動になり、より実態がつかめなくなってしまう。また、信者がより原理化、先鋭化しかねない。ちなみにオウム真理教は解散後、3つの分派に分かれ、そのうち2つが地方都市に拠点を移し、公安調査庁は各団体がいまだ教祖麻原彰晃の影響下にあるとみて、観察を続けている。
臨時国会の会期末には、いわゆる「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(被害者救済法)」が成立した。旧統一教会をめぐっては、信者から多額の献金を集め、経済的困窮や家庭崩壊に陥らせる事例が相次いでいた。政府は不法行為の防止と被害者救済のための制度改革に乗り出し、迅速に被害者救済法を成立させた。
同法のポイントはいくつかある。まず、「不当な寄付の勧誘行為」を以下のように定義(第4条、要約)している。
②同様に帰りたい意思を示しているのに返してくれないケース
③勧誘することを告げず、寄付者が退去しにくい場所に連れて行く行為
④勧誘を受けた相談を第三者にした特に、威迫する言動を交えて妨害行為をすること
⑤恋愛関係を利用して、寄付しなければ関係解消するなどの告知をすること
⑥霊感商法
さらに、第5条では、
を禁止している。
こうした行為にたいして、勧誘を受けた者が「困惑」した場合、寄付の取り消しができるとした。
同法の適用範囲は宗教法人だけではない。各種団体やNPO法人などにも広げている。つまり、法人格を有していない宗教団体にも適用されるので、仮に旧統一教会が法人格を剥奪されても同法は適用されることになる。なお、命令に違反した場合は1年以下の拘禁刑や100万円以下の罰金が科される。
旧統一教会だけではなく、同法に抵触しうる既存法人は潜在的にかなりある。
⑥霊感商法は「先祖供養」「病気治し」などを熱心に実施する新宗教の中には、民事訴訟を抱える教団も少なくない。また⑦借金をさせてでも寄付させることも、仏教寺院の中にも行っているケースが散見される。「一括でお布施を払えなければ、ローンで払え」「カネがないなら親戚から借りてこい」などと要求する寺が、かなり存在していることを私も把握している。同法が、被害者の防衛策としてきちんと運用され、機能することを期待したい。
不当な行為が積み重なっていけば、「宗教法人解散請求」が視野に入る。人々を苦しめる悪質な組織は即刻、「退場」してもらわなければならない。