日本も反カルト法の整備に乗り出す時だ

一方で、この法案には抜け穴もある。例えば「個人対個人」の寄付行為が、適用されない。教団幹部があくまでも個人的な寄付であることを建前にして「集金」し、組織に再寄付するようなことは容易に想像できる。

また、マインドコントロール(洗脳)下による寄付については、「配慮義務」にとどめ、「禁止」としなかった。これは、「マインドコントロールの定義をすることが難しい」ということが理由だ。創価学会を支持母体に持つ公明党への配慮が感じられる。

指に糸をつけ、何かを操る手
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しかし、法案整備にあたってはまず「カルト」や「マインドコントロール」の定義こそを、議論すべきではなかっただろうか。真っ当な宗教と、一線を引いて適切に運用させるためにも、この2つの定義こそが重要であったと思う。

日本では「カルト」を、「反社会的な宗教集団」のように漠然と捉えていて、明確な定義は存在しない。例えばフランスでは、日本以上に深刻な宗教問題を抱え、2001年に反セクト(カルト)法という法律を整備するに至っている。セクトとは、おおもとの宗教から派生した宗教教団をさし、「社会にたいして、強硬的かつ断続的な姿勢を持つ過激主義的宗教グループ」(マックス・ウェーバー/エルンスト・トレルチ)のことである。

そのセクトの定義(1995年、フランス国民議会「アラン・ジュスト報告書」)は、

①精神の不安定化
②法外な金銭的要求
③住み慣れた生活環境からの断絶
④肉体の損傷
⑤子供の囲い込み
⑥反社会的な言説
⑦公共の秩序を乱す
⑧訴訟の多さ
⑨通常の経済回路からの逸脱
⑩公権力を取り込もうとする企てがある

としている。

フランスは厳格な政教分離をとっている国として知られている。同時にカルトにたいしては毅然きぜんとした対応を示しているといえる。日本も、反カルト法の整備に乗り出す時機にきているかもしれない。