旧統一教会の宗教法人格剥奪が生み出す“新たなリスク”

2022年は宗教界にとって、大きな出来事が相次いだ。戦後宗教史における節目を迎えた年、といっても過言ではないだろう。

安倍晋三元首相の暗殺をきっかけにして多くの政治家の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への関与が明らかになった。旧統一教会へ「質問権」が初めて行使され、「被害者救済法」が成立。今後、考えうる宗教法人の「解散請求」に向けて大きく舵を切った形だ。

悪質な宗教へメスを入れることは必要だ。しかし、長期的視座でみれば、昨今の防衛拡充とも影響し合い、危うさも孕む。「安倍元首相暗殺」という衝撃をきっかけに、「政治と宗教との関係」は一歩、接近した。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(東京都渋谷区)=2022年11月7日
写真=時事通信フォト
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)日本本部(東京都渋谷区)=2022年11月7日

奈良の選挙の応援にかけつけた安倍氏が、7月8日に狙撃された事件はその後、旧統一教会の不当な献金問題をあぶり出す呼び水となった。

山上徹也容疑者の母が旧統一教会にのめり込んで多額の献金を重ね、家族は破綻。その恨みを、過去に旧統一教会へのビデオメッセージを出していた安倍氏に向けたのだ。政治と宗教との不適切な関係があぶり出される中、多くの「2世信者」らが被害の声を上げ始める。ようやく政府は重い腰を上げるに至った。

文部科学省は旧統一教会にたいし、宗教法人法に基づく調査を決定。1996年の改正宗教法人法施行以後、初めて「質問権」が行使された。このことで旧統一教会にたいする解散命令請求への第一歩が、踏み出された。

不法行為による宗教法人の解散は、各地でテロと殺人を繰り返したオウム真理教と、霊感商法で摘発された明覚寺の2例のみ。いずれも刑事事件に発展したケースだ。

しかし、民事上の不法行為での宗教法人解散はこれまで例がない。旧統一教会が解散となれば今後、多数の訴訟を抱えるような宗教法人に、メスが入っていく可能性は捨てきれない。

来年以降の流れでいえば、旧統一教会に著しい法令違反が認められれば、文部科学省が裁判所に解散命令を請求する。裁判所が解散命令を出せば宗教法人格を失い、宗教団体(任意団体)へと転落する。すると社会的信用を失うだけではなく、税制優遇などが受けられなくなる。つまり法人税、固定資産税、都市計画税、相続税などが課税されることになる。