生理の不調が軽減すればずっと働き続けたい

目指すべき未来を示すデータもある。働く女性1956人のうち、「ずっと働き続けたいと思う?」の問いに、「そう思う」と答えたのは、

「治療して生理前や生理中の症状が軽減している」人の場合:64%
「症状が強いが我慢している」人の場合:50.5%

また、「不快な症状が改善したらチャレンジしたいと思う仕事は?」という問いに対する「症状が強いが我慢している」人と「治療して生理前や生理中の症状が軽減している」人の数字を比較すると、

「新規事業などのプロジェクト提案」14.1% vs 16.0%
「昇格・昇進試験」10.8% vs 20.0%
「出張が多い部署・職種への異動」9.2% vs 15.0%

後者の人のほうがすべての項目で高い数値が出た。この調査で分かることは、「治療して生理前や生理中の症状が軽減している」女性の、仕事への意欲的な姿勢だ。

「月経前の悩みに寄り添う会」のメンバーの中には、生理による不調によって、進みたかった道を断念した人も少なくない。

大学卒業間近だった20代のNさんは、ずっと目標にしてきた研究職の道を断念し、PMDDの治療に専念するため実家に帰った。そのため、「いつかまた夢に挑戦したいです」と語る。サービス業に従事するLさんも、「月経による不調が軽減したら、仕事をバリバリこなして、責任ある役割を任されるようになりたい」と話す。

オフィスでハイタッチする女性のグループ
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

女性の月経に関する不調による経済損失は年間6828億円

経済産業省が2019年3月に発表した調査では、月経随伴症状(腹痛、腰痛、眠気、イライラ、便秘など)による1年間の社会的負担は「6828億円」、その中で労働損失(欠勤、労働量や質の低下)は「4911億円」にも及ぶということが分かっている。

美容脱毛サロンを展開するミュゼプラチナム(東京都渋谷区)が2019年、2020年に全従業員を対象として実施した「生理に関する調査」によると、月経随伴症状による労働損失を「13億8700万円」と算出している。

この結果を受けて、同社は従業員全員が「(月経随伴症状に関して)適切な治療を受けているといえる状態」で再び算出したところ、「5億3100万円」まで労働損失の削減が可能という結果に。同社では、この数字に近づくよう、さまざまな取り組みを実施している。

慢性的に人手不足が続く昨今、生理によって働く女性のパフォーマンスがひと月あたり5日間も6割程度に落ちてしまっては、企業としても大きな損失につながる。

前述のとおり、日経BP総研の調査では、生理の不調が軽減すれば、これまで敬遠しがちだった「昇格・昇進試験」や「新規事業などのプロジェクト提案」「出張が多い部署・職種への異動」にも挑戦したいと考えている女性が少なくないことも分かっている。

女性活躍推進のためには、働く女性への健康支援が不可欠だ。管理職であるなしにかかわらず、生理がない男性も生理が軽い女性も、生理を正しく理解することが社内の人手不足を軽減し、生産性を向上させるだけでなく、「ずっと働き続けたい」と思える“働きやすい会社”への一歩となるだろう。

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