「経営は○か×で、△はない」に惚れ込んだ

【村井】根岸さんの経営哲学で、私が一番感銘を受けたのは「経営は○か×で、△はない」という考え方です。組織の中で○か×で意見がぶつかることはよくあります。時には妥協も必要でしょう。でも○か×かを互いが主張して妥協点を見いだすのと、最初から△というのは意味が違う。正論のない人が△を選ぶのだ、というのが根岸さんの信念です。○でも×でもいいから自由にのびのびやれ。

その上で、やったことの責任は持つというのが根岸さんの社員への視線なのでしょう。そんな根岸さんに私は惚れ込んでしまいました。

チェアマンを4期8年務めた村井満さん
撮影=奥谷仁

――2015年からは明治安田生命がJ1、J2、J3すべてのタイトルパートナーになっています。それがもう8年も続いていて、われわれ、サッカーファンも「Jリーグといえば明治安田生命」と認識しています。

理念を共有する会社とは50年一緒にやっていける

【村井】J3のタイトルパートナーとしてのシーズンも終盤を迎える秋口に、明治安田生命のオフィスにお招きいただく機会がありました。東京・丸の内にある明治安田生命本社の社員食堂が会場でした。そこには全国の支社長ら幹部の人たちが100人近く集まってくださっていて、壁にはJ1、J2、J3の全チームのユニフォームが張ってあるのです。その場で私は大きな拍手で迎えられ、「村井さん、頑張ろう」と励ましてくれたのです。

それはもううれしくて、思わず涙が浮かんでしまいました。

多分、この頃、明治安田生命さんはJ1、J2のタイトルパートナーになることを検討されていたのかもしれません。明治安田生命さんとJリーグは「地域を元気にしたい」という共通の理念を持っています。理念を共有する人の集合が会社であり、そういう会社とは10年、50年と一緒にやっていけるものです。100万人の味方を得た気持ちでした。