それによると、ウクライナとの和平交渉を「支持する」または「おそらく支持する」と答えた回答者は57%に上り、半数を超えた。これに対し、戦争継続を支持すると回答した人々は27%にすぎなかったという。
強硬派がプーチンの命綱になった
政府内部からはハト派の流出が止まらず、タカ派の唱える強硬論はプーチン政権の命綱となっている。政権としては侵略支持のメッセージを国民に浸透させ、弱腰になった世論を再び戦争推進に戻したいのだろう。
さすがのプーチン氏にも取り巻きの腹中は読めないだろうが、それでも軍部批判を続ける彼らを許容しているのは、そうせざるを得ないところにまで追い詰められているからでもある。
泥沼化でロシア軍の旗色が悪くなっているが、批判の矛先を軍上層部へ向けておけば、政府としては侵略の方針を維持しやすい。ウクライナ侵攻は正義だが、これまでは軍部が無能であった――というわけだ。
また、兵の確保においても、一大傭兵企業を率いるプリゴジン氏は味方に付けておきたいところだろう。9月の動員で予想外に大きく動揺した国民感情を鑑みれば、2度目の動員は当面難しいとの観測がある。
動員されるのは1年間の訓練または実戦経験を積んだ予備役だが、その予備役も、もとはといえば年2回の徴兵で強制的に訓練を積まされた一般市民だ。自身や大切な家族が戦地に駆り出されるとなれば、国民感情の悪化は免れない。
戦局は芳しくなく、職業として戦地に赴く傭兵への依存が自然と増えることだろう。その意味でプリゴジン氏は、プーチン政権の命綱とも言える存在となった。
犠牲者10万人以上の「出世ゲーム」の末路
殺人歴のある企業経営者に、穏健派から急転した前首相、そして人道支援を口実に戦地で実績を稼ぐ党首。失意のリベラル派がこぞって去ったプーチン氏の周囲には、一癖も二癖もある保守強硬派だけが残る。
戦争を絶好の機会と見て手柄をねらう彼らの戦意扇動はやまず、プーチン氏はいまだ勝機があると信じて部隊を配置し続けることだろう。ワシントン・ポスト紙は11月、米国防省による推計として、ロシア・ウクライナ両軍ともこれまでに10万人以上の死傷者を出していると報じている。
強硬派らが競う出世ゲームの陰で、駒として使い捨てにされる多くの人命が犠牲となっている。