政権中枢には「荒くれ者」ばかりに…

戦争支持派の急先鋒せんぽうに、プーチン氏の取り巻きのなかでは随一の荒くれ者であるエフゲニー・プリゴジン氏がある。

表の顔は、成功した実業者だ。経営するレストランに来店したプーチン氏と親しくなり、プーチン氏は来賓との重要な会合を度々店で開くほど懇意になった。このことから、「プーチンの料理番」の異名を持つほどだ。

ケータリング工場を視察するプーチン氏(写真=Government of the Russian Federation/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)
エフゲニー・プリゴジン氏(右)(写真=Government of the Russian Federation/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

その裏の顔は、ウクライナに兵士を送り出している傭兵集団・ワグネルの創業者だ。これまでこの経歴はひた隠しにしていたが、英ガーディアン紙によると今年9月、本人が関係を認めた。

かつて、ワグネルとの関係を指摘したジャーナリストを訴えておきながら、わずか2カ月後にはロシアを救う傭兵集団のトップとして自らをPRする抜け目なさだ。

英iニュースは、プリゴジン氏の驚くべき経歴を取り上げている。

それによるとプリゴジン氏は10代で女性を殺害し、10年間刑務所に服役。出所するとホットドッグの屋台を開いて資金を貯め、西部サンクト・ペテルブルグの街に自分のレストランを構えるまでにのし上がった。

その後、英BBCなどによると、同市の市長室に副市長として務めていたプーチン氏が来店。急接近し、繰り返しケータリングを受注するなど親密な仲になったという。

いまでは7000人を擁するともいわれるワグネルのトップに君臨し、米中間選挙にも干渉工作を行ったとされるトロール工場(偽情報の拡散工場)をも展開している。

殺人の犯歴がある「プーチンの料理番」の素顔

プリゴジン氏の性格には、かなりの残忍さがうかがえる。

11月、ワグネルの戦闘員がウクライナ側に寝返ったあと、再びワグネルに捕らえられる一件があった。ワグネルのメンバーらは捕縛した戦闘員をハンマーで殴打し、殺害している。この様子は動画に収められ、ソーシャルメディアのTelegram上に流出した。

米CNNによると、自身のTelegramチャンネルでこの動画について問われたプリゴジン氏は、「ロシア人は裏切り者の臭いを嗅ぎ分けることができる。生まれつきだ」と返答したという。

別の投稿で氏は、さらに残虐なコメントを残した。「このストーリーを劇場で見たい。このショーで処刑されたやつは明らかに、ウクライナで幸福を見いだすことができなかった(中略)。この映画には『犬死にした犬』とのタイトルがぴったりだ」

ワグネルはウクライナ侵攻に際し、囚人たちを傭兵としてスカウトしたことで議論を呼んでいる。6カ月戦い抜けば自由を手にできるとの触れ込みだった。

処刑された傭兵もこのようにして刑務所を出た元囚人だが、両親がウクライナ西部に住んでいることから、戦闘に抵抗を感じるようになったという。